My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「──雪さん」
「あ。終わった?」
「はい」
手早くAKUMAの救済を終えて戻れば、ティムを肩に乗せた雪さんが振り返った。
「やっぱりAKUMAは三体しかいませんでした」
「ううん…情報にしては、少ないね」
「やっぱりそう思います?」
今度は雪さんも連れて、再び闘技場内に踏み込む。
「わー…こういうの、コロッセオとか言うんでしょ。確か」
きょろきょろと巨大な内部を見渡しながら呟く雪さんの言葉に、そういえば聞いたことある名前だな、と思い出す。
昔、このローマの地で歴史を刻んだ建物なんだろうな、きっと。
「神田ー、ゴズー!」
口元に手を当てて、雪さんが辺りを呼ぶ。
情報通りなら、此処に神田達がいるはずなんだけど…。
「…人の気配はないですね…」
「ううん…何処行ったんだろ…神田達」
二人の姿はおろか、シンと静まり返った遺跡に人影はまるでない。
「闘剣士って人もいなさそうですし…」
「うーん…」
大きな建物だから、あちこち見て回るのは時間がかかったけど、どんなに捜しても人影は見当たらなかった。
「どうします?」
難しい顔をして腕を組む雪さんに、意見を仰ぐ。
こういう時は、経験値の多い雪さんの方が適切な行動を取れるだろうし。
「…近くに確か、街があったよね。其処で情報収集してみようか」
「わかりました」
「此処からなら徒歩でも行ける距離だし。もしかしたら神田達も、其処で休息を取ってるかも」
「だといいんですけど…」
神田がAKUMAを救済していてくれたのなら、三体しかAKUMAがいなかったのも頷ける。
でも逆を言えば、神田がAKUMAを取り逃がすことはしないはずだろうし…此処にいたAKUMAは、神田が去った後に現れたのかな。
「……」
「アレン? 行くよ」
「…はい」
何故現れたのか。
…やっぱり此処にイノセンスの気配があるからなのか。
ぐるりと闘技場を見渡してみるけど、何処も変な気配や物は見当たらない。
後方から呼ぶ雪さんの声に返事をしながら、視線をそちらに変えた。
とりあえず、情報収集が先だ。