My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「此処が闘技場ですか…」
「大きいねー…」
馬車に揺られて一時間程。
辿り着いた闘技場の遺跡を雪さんと見上げる。
「アレン、AKUMAはいる?」
「はい」
左目を発動させて、辺りのAKUMAの気配を探る。
気配は一つ、二つ…三つ。
「三体程、闘技場内にいます。救済し終えるまで雪さんは此処にいて下さい」
「うん、わかった」
大量のAKUMAの目撃例があったにしては少ないな…。
雪さんが一緒だから、少ない方が助かりはするけど。
コムイさんが今回僕を選んだ理由は、恐らく寄生型エクソシストだからだと思う。
体内にイノセンスを宿した僕なら、AKUMAのウイルスを受けても浄化できる。
でも雪さんは一発でもAKUMAの弾を喰らってしまうと、死んでしまう。
「絶対ですよ、動いちゃ駄目ですからね。あ、でも危険だと思ったら何処かに避難して下さい」
「わかったわかった、大丈夫だから。アレンこそ気を付けて」
念を押して言えば、苦笑混じりにひらひらと片手を振られる。
体は男性に劣らず鍛えてるみたいだし、ファインダーとしての立場も理解してる雪さんだから、そう無謀なことはしない。
わかってはいるけど、前回の任務のことがあったから不安は尽きなかった。
あのロンドンの任務で、AKUMAに捕まってる姿を見つけた時はひやりと肝が冷えた。
咄嗟に気付いたら退魔の剣を発動させて、AKUMA目掛けて投げつけていた。
結果的に雪さんを助け出せたけど、結果的に頭からAKUMAの血を浴びせちゃったからな…もうちょっと気を付けよう。
──ザ、
「いた」
闘技場の中に踏み込めば、遺跡となっている其処は瓦礫があちこち散乱していた。
その中で静かに浮かんでいる球体状のAKUMAが三体。
どれも形からしてレベル1程。
これならすぐ救済も終えられる。
「ティムは雪さんの傍についてろ。すぐ戻る」
視線はAKUMAに向けたまま言えば、近くにあったティムの羽音が遠ざかるのを耳にした。
「イノセンス発動」
左腕を発動させて一歩踏み出す。
気配を感じ取ったのか、三体のAKUMAの視線が僕に向いた。