My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
ロンドンの任務でやけに雪さんのことに関して突っかかってきた時は、いつもより喧しいパッツンだな。くらいにしか思わなかったけど。
今までは雪さんのことで何度注意しても、スルーばかりしてた癖に。
でもティムを探していたあの日、あの教団の中庭で二人の姿を見つけた時に気付いてしまった。
遠目に見えた、雪さんの顔を胸に引き寄せて抱いている神田の姿。
一瞬言葉が詰まって、声は掛けられなかった。
足はその場から動けずに、固まってしまった。
あんなこと間違っても神田は普通女性にしないだろうし、雪さんも冗談でも、神田相手に大人しく身を預けたりしないはず。
だからこそ、その行為の意味する大きさがわかってしまった。
「やっぱり夢じゃないよなぁ…」
後で何度もあれは夢だったんじゃないかと思うくらい、衝撃的で僕の中ではあり得なかったけど。
…その確認の為に、あの時雪さんの傍にいたティムの録画映像を見ることはできなかった。
なんの話をしていたのか、気になりはしたけど…聞いちゃいけない気がして。
聞いたら、後悔するような気がして。
……。
………というか神田が優しく甘い言葉とか囁いてたら気持ち悪いから聞きたくない。
「──アレン! 馬車拾ったよ!」
遠くから僕を呼ぶ雪さんの言葉に、思考が中断される。
はっと顔を上げれば、ぶんぶんと馬車の近くで手を振るその姿が目に映った。
駄目だ、今は任務中なんだから。
変なこと考えるな。
「任務に集中しろ、僕」
小さな声で自分に喝を入れて、雪さんの下に小走りで向かう。
とりあえず神田のことは頭の隅っこに追いやっておこう。
なんか考えるの癪だし
神田よりゴズさんの安否が第一だ。
よし、そういうことで。