My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
あの日は結局、どんなに調べても14番目のことはどの資料にも載ってなくて、わからず終い。
抱えたままの不安は消え去ることはなかった。
…でも。
『アレン・ウォーカーって人物がそれだけ、信用するに足る存在だからだと思う』
師匠の事件部屋で、真っ直ぐに迷いなき言葉を雪さんは僕に向けてくれた。
ノアとして教団に疑われている僕の現状を知らないからこそ、雪さんのその言葉は同情や情けで生まれたものじゃなくて。
真っ直ぐに僕に届いて、暗くもやもやと抱えていた気持ちを少しでも拭い去ってくれた。
きっと雪さんなら、本当に僕の14番目のことを知ったとしても、同じことを口にしてくれる。
漠然とだけど、そんな安心感があった。
「駄目だなぁ…」
リナリーやミランダさんや蝋花さんや…他の女性は守りたいって思うのに。
雪さんに対しては、なんだか甘えてしまいたくなる自分がいる。
勿論、守りたいと思う気持ちもある。
雪さんはファインダーだから、エクソシストであるリナリーよりずっと弱い存在。
なのに…その口から零れる言葉や浮かべる表情は、大事な時にはいつも偽りなく真っ直ぐ届くから。
つい凭れてしまいそうになる。
受け止めて欲しいと、思ってしまう。
「…はぁ」
思わず溜息が零れた。
そんな自分が女々しいなって思うのと…そして、
「…多分、」
雪さんが甘えたいと思う人は、きっと別にいるから。
…別にいいんだ。
雪さんが頼れる人がいるのは、良いことだと思うし。
やっぱり女性には笑っていて欲しいと思うから。
雪さんに笑顔を与えられる人がいるなら、それは良いことだ。
でも。
だけど。
だからって。
「……予想が当たってたらどうしよう」
なんでよりによって神田なんだろう。
「…はぁあ~…」
大きな溜息と共に、つい項垂れる。
いいんですけどね、別に。
いいんですけどね!
でもあんな雪さんの頭を物みたいに叩く人、認めたくない。
あれは女性の敵です、本当。