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My important place【D.Gray-man】

第28章 ローマの剣闘士



 それから教団で雪さんの姿を見掛ければ、なんとなく気に掛けるようになった。

 よく見てみれば、雪さんは神田とペアを組んでいるけど、神田みたいに他人に冷たい人じゃないとわかった。
 それよりラビと似て、周りとの人間関係を円滑に過ごせている社交的な人。
 なのにあの儚く笑った顔は一度もそこでは見せてなくて、忘れられずに僕の胸に引っ掛かったままだった。


「闘技場まで距離あるし、馬車拾おうか」

「それなら僕が──」

「いいよ。アレンにはAKUMAとの戦闘に集中して欲しいし。サポートは私に任せて」


 軽く笑って首を横に振った雪さんが、小走りに駆けていく。
 つい後を追いたくなったけど、そう言われてしまうと下手に動けなくて足を止めた。


「あ。また雪さんに甘えてる…」


 ふといつも傍にいるティムの姿が見えなくて探せば、いつの間にか雪さんの背中の荷物の上にちょこんと乗っているのが見えた。
 ほんとに雪さんに甘えるのが好きだなぁ…ティムは。


「……僕と同じなのかな」


 ぽつりと漏れた言葉は、つい自然と口から。

 …夜中に師匠の事件部屋で、雪さんと雑談を交わした時。
 一人抱えていたもやもやとした暗い思いを、雪さんは少なからず払ってくれた。


 "14番目"というノアメモリーの宿主。

 それが僕だと、師匠は迷わずはっきり言った。
 その時は思いっきり否定してやった。
 僕は僕だ、そんな14番目だなんて意味不明なノアに、僕自身を譲る気はない。

 …それでも得体の知れない何かが体の中に宿っているという現状は、気持ち悪いものでしかなかった。

 気持ち悪くて、不安で、混沌しか生まれないぐるぐると渦巻く心。
 それを抱えたまま眠ることはできなくて、無駄でも足掻いてみようとノアのことを調べに夜の書庫室に向かった。


 其処で一人、黙々とノアのことを調べていたのが雪さんだった。


 なんでノアのことを調べているのか、気になったけど問いかけはしなかった。
 あの時は僕も僕のことで、精一杯だったんだろうと思う。

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