My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
「そうだね。ごめん、気遣わせちゃって」
「いいえ」
普段の明るさに戻る雪さんに、内心ほっとする。
女性にはやっぱり笑っていて欲しいと思うし…雪さんが落ち込む顔は、あまり見たくない。
それが神田相手だと思うと、良い気分じゃないっていうのも正直ある。
教団で初めて出会った時から、雪さんの姿を見かけるのはいつも神田の隣だった。
休日に一緒のところは、見たことはなかったけど。
神田が団服を着ている時は、当たり前に隣にはファインダーのマントを着た雪さんがいた。
リナリーに聞くと、二人はよく任務でペアを組まされるらしく、それだけ仲が良いのかなぁなんて最初は思っていた。
でも初任務のマテールで、神田と雪さんと同行した時にそうじゃないと気付いた。
エクソシストとファインダーとして、二人の実力が高いのはわかった。
でもそれだけ。
二人の間に信頼関係みたいなものは見えなくて、お互いに淡々と任務をこなしている感じ。
まぁ神田が罵声を飛ばして雪さんの頭を叩いたり、雪さんも文句言ったりする時はあったけど。
とにかく、とてもじゃないけど仲の良い二人には見えなかった。
だからなんで二人がよく組まされているのか、不思議だった。
リナリーに問えば、"兄さんの考えてることは時々よくわからないから"とコムイさんのことを口にして苦笑いしていた。
僕もわからなかったけど、神田のことなんてどうでもいいし。
あまり気に止めなかったんだけど。
「でもやっぱり気になるのはあの情報だよね。"ローマの剣闘士"」
「千年も生きてるって噂のですか?」
「うん。…ララの時と似てるよね?」
「そうですね。もしかしたらその剣闘士がイノセンスかも…」
「その可能性を見て、神田達が派遣されたらしんだけどねー…」
僕の隣を歩きながら、空を見上げて雪さんがぼやく。
"千年生き続けている剣闘士がローマにいる"
それがイノセンスではないかとの報告を受け、神田達はその回収に向かったらしい。
雪さんの言う通り。
それはまるでララのようだと思った。