My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
一瞬宙に浮いたように感じた、その直後。
「っ!?」
一気に体は真下に落下した。
反射的に両腕で頭を庇うように抱き込む。
こんな高さから落ちたら下手したら死ぬ!
「──!」
突如横から衝撃がきて、体を強く掴まれた。
否、抱き締められた。
「っ…?」
唐突に止まる落下の体感。
ギシッと何かが軋むような音がして、ぶらりと宙に揺れる体。
「っふー…間一髪…」
「……ア、レン…?」
強く瞑っていた目を開ければ、目の前には真っ白な頭。
そして真っ白なファー付きマント。
どうやらイノセンスを発動させたアレンが、私を空中で抱き止めてくれたらしい。
「だ、大丈夫っスか…! 今引き上げます!」
「うん、ありがとうチャオジー」
上を見上げたアレンが礼を言う。
つられて顔を上げれば、空中に迫り出した通路から身を乗り出して、両腕のイノセンスを発動させたチャオジーが白い帯のような物を掴んでいた。
その帯はアレンの白いマントに繋がっている。
これ、アレンの"道化ノ帯(クラウンベルト)"だ。
「あ、ありがとう…」
「いえ。しっかり掴まっていて下さいね」
間近にあるアレンの顔に礼を言えば、安心したように息をつきながら頷いてくれた。
そのままチャオジーの怪力でなんなく上に引っ張られ、通路に足をつける。
「雪、大丈夫さ?…その…色々…うん、色々」
「そこ。変な含みある言い方しない」
アレンに体を離してもらうと、傍に寄ってきたラビが声をかけてくれる。
声をかけてくれてるけど…何顔をそっぽ向けて耳赤くしてるんですか。
絶対変な妄想してるでしょ、其処の兎さん。
「なんさ、オレだけじゃねぇから。アレンも変な目で見てたって」
「み、見てませんよ! ラビと一緒にしないで下さい!」
顔を背けたまま、ぽんぽんとアレンの肩を叩くラビ。
途端にアレンの顔は真っ赤に染まった。
というか「アレン"も"」って。
それ、自分も認めるんですね兎さん。
変態兎さんだって認めるんですね。