My important place【D.Gray-man】
第28章 ローマの剣闘士
必死に暴れようとしても、服の下でぞわぞわと肌を這う嫌な気配に上手く四肢を動かせない。
「っは…ほんと、変なことやめて…ッ」
息が上がる。
激しい運動をしてるみたいに、鼓動がドクドクと鳴る。
「心を落ち着ければ…大丈夫だ…雪、私に身を預けて…」
する、と体中を這っていた髪の束が一つ、顔に伸びる。
額の絆創膏に影を落とすそれに、思わず息を呑んだ。
駄目…!
「っこんなことされて、落ち着く方が無理だって…ッ」
上がる息もそのままに、なんとか強く片手を動かして目の前のその髪の束を掴む。
優しい声は信用ならない。
そんなふうに優しい言葉を投げかけながら、あの人達は私の体に鈍く光る刃の器具を当てた。
私の言葉なんて、何も聞いてくれやしなかった。
あの地下室での行いと、これじゃ一緒だ。
「私の体…ッこれ以上弄らないで…!」
目の前のヘブラスカの顔を睨み付ける。
叫んだ声に、ピクリと一瞬ヘブラスカの髪の束全てが動きを止めた。
──パリッ
その一瞬。
掴んだ髪の束に、電気のような音が走った。
「──!」
「っ!?」
ぶわっと一斉に離れる髪の束。
放り出されるように、宙に浮く体。
あ。
「雪さん…!」
落ちる。