My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
「…まさかな」
本当にあの時、引っ叩いてできた傷なのか。
一瞬考えた思考は考えた瞬時に消え去った。
どんだけ脆い頭してんだよ、あり得ねぇだろ。
「どうせそこらで、ぶつけたんだろ」
こいつはファインダー。
生傷は日常茶飯事で負っている奴だ。
足手纏いは置いていくとよく言っている所為か、多少の怪我だとこいつは何も言わない。
足を引き摺ってでも出血を無視してでも、黙って任務遂行を目指す。
面倒な奴が嫌いな俺には楽な相手だった。
だからよく組まされていたのか。
『君には必要だと思ってね』
前にコムイに問い質した。
何故同じ奴を組ませるのか。
確かに月城は、他の正義面したファインダーみたいに綺麗事は吐かない。
ただしそんな奴、他にもごまんといる。
月城一人に限ったことじゃない。
群れない俺に仲間意識でも植え付けたかったのか。
コムイの答えはそれだけで、結局のところ真意はわからなかった。
興味なんてないから、わからないことを追求する気もなくて。俺は言われるまま、こいつと任務をこなした。
今でもその真意はわからない。
知ろうとも思わない。
けれど任務でこいつが俺の隣にいることは、いつの間にか当たり前になっていたように思う。
…だからなのか。
こいつがAKUMAの銃弾を受けて、死ぬんだと思った時。
当たり前にあった存在が、消えるんだと悟った時。
勝手に体が動いていたのは。
「チッ」
靄(もや)が掛かったような、そんな曖昧な思考に苛立つ。
頭を切り替えるように、時計を再度確認する。
此処の列車の始発はまだ遅い。
もう一度伺った月城の顔は頭の痛みが退いたのか、なんとなくだが穏やかなものに変わっていた。
「ったく、」
溜息と共に手を離す。
仕方ない。
もう少しだけ寝かせておいてやる。
──そう思ったのが30分前。
「いい加減起きろ愚図ッ!」
「っ!?」
いつまでも起きる様子のないそいつに結局、思い切り布団を引き剥がす羽目になった。
自分で起きろつっただろうが。