My important place【D.Gray-man】
第6章 異変
薄らと窓の朝日が顔に当たる。
僅かな眩しさに、つい眉間に力が入る。
朝。
眠りに落ちた時と同じ格好で、目が覚めた。
「6時か…」
時計を確かめながら振り返る。
ベッドには小さな膨らみがあって、未だそいつが寝ていることを示していた。
というか。
「…近ぇよ」
振り返れば、すぐそこに月城の寝顔。
半ば布団に埋もれているから、辛うじて見える程度だが。
それでもぎりぎり触れないように僅かな距離を置いて眠る姿は、横向きの体を縮めるように丸めていて、まるで小さなガキのようだった。
「おい、起き──…」
布団を剥がそうとして手を止める。
深く眠っているのか、月城はぴくりとも動かない。
仮にもこいつは女で、仮にも俺は男。
互いにそういう意識をしたことはないが、こうして同じ部屋で一晩過ごすことになっても、こいつは申し訳なく謝るばかりで危機感みたいなものは微塵も持っていないようだった。
男だ女だと反応されんのも面倒だが、こうしてあまりに無防備な姿を曝け出されると一瞬考える。
…女だろ、仮にも。
「らしいと言えば、そうかもな」
常にファインダーの白いマントに身を包んでいる姿が当たり前で、女らしい姿なんて見たことがない。
ベッドに肘を付いて、まじまじと顔を見る。
こいつの頭部をよく見ることはあったが、こうして顔を長く見たことはなかった。
布団で半分隠れた顔は、目元しか見えない。
「ん…」
また頭痛でもするのか、小さな声を漏らしながら眉が険しく寄った。
…そういや、こいつは頭ばかり抱えてた気がする。
「……」
考えもなしに伸びた手が、その髪に微かに触れる。
前髪を静かに払えば、絆創膏の貼られた額が露わになる。
また出血したのか、絆創膏はじんわりと赤く滲んでいた。
そういや、この怪我はいつ負ったのか。
ふと疑問が浮かぶ。
俺の血は月城の中のAKUMAウイルスは浄化させたが、傷を完治させるまでには至らなかった。
それでもこんな些細な額傷くらいなら、出血くらい止められるはず。