My important place【D.Gray-man】
第27章 夢現Ⅱ
「それより、ラビはなんで此処に?」
「ん? サービス残業中」
「サービス残業?」
「どっかの誰かさんがトイレにでも行ったかと思ったら、いつまでも帰ってこねぇから。迷子にでもなったかと思って」
「………私、アレンじゃないよ」
というか起きてたんだ、ラビ。
「ごめん、無駄に心配かけて。ちょっと頭冷やしたくて」
「別に無駄じゃなかったからいいさ」
「?」
何が、と目で問えば。頭の後ろに両手を組んで、ヘラリといつもの砕けた表情でラビは笑った。
「雪の初泣き顔見れたしなー」
「…欠伸です」
「ハイハイ。欠伸な欠伸」
「ほんとだって!」
「ハイハイハイ」
本当に、泣きたくて泣いた訳じゃない。
泣き顔なんて弱い自分の顔、容易く他人に見せたくないから。
見せてもいいと思えたのは、神田と──
「……」
神田"と"?
「あ。それよか雪、どこも怪我してねぇよな?」
「してないけど…なんで?」
「いんや。じゃあ刻まれずに済みそーさ」
「刻まれる?…ああ、大丈夫だよ。神田は刻むより殴る方が断然多いから」
「………」
「その同情の目やめて」
雑談混じりに、ラビとバルコニーを後にする。
何かが引っ掛かるような気がしたけど、今はそれより占いの方が気になるかな。
イノセンスの回収を滞りなく行えてたら、明日帰る頃には神田達も教団に帰り着いてるかなぁ。
──"帰らないと"
「?」
うん、だから教団にね、帰らないと。
…?
何私、自分に言い聞かせてるんだろ…。
「…不思議ちゃんキャラじゃないから」
間違っても、妄想と現実の境がわからないような性格じゃないから。
思わず自分で自分にツッコんで、首を横に振る。
「なんさ急に」
「ううん」
振り返ったラビに、言葉を返してその横に並ぶ。
うん、帰らないと──…あそこに。
帰還を願う気持ちが、不思議と強くなった気がした。