My important place【D.Gray-man】
第27章 夢現Ⅱ
「雪、聞いてるんさ?」
もう一度、今度は少し強めに呼ばれる。
振り返れば、月明かりに照らされる赤毛が見えた。
「…ラビ?」
あれ、私…何してたんだっけ、此処で。
一瞬、自分が此処にいる意味がわからなくて。
でもすぐに思い出す。
ああ、そうだ。
神田のことを考えると止まらなくて、落ち着くために外の空気を吸いに来たんだった。
「雪…っ」
驚いたように、私を見たラビが小走りで寄ってくる。
「大丈夫さ?」
大丈夫?
心配そうに私を見る翡翠色の目を見返す。
「…?」
つ、と。頬を伝う何か。
「あれ…?」
それは顎のラインを伝って、ぽたりと地面に落ちた。
視線を下げれば、小さな滴の跡。
これ──……涙?
「なんで…」
意味がわからず、自分の目元に手を当てる。
少量のそれは既に止まっていて、頬を伝う涙跡だけがひんやりと感じ取れた。
「…ユウのことだろ?」
そっと、身を屈ませて顔を覗き込んでくるラビ。
その表情は、心配そうにこちらを伺って。
「大丈夫だって。ユウはそう簡単に死なねぇし、あの占いがユウのことかも定かじゃねぇさ」
優しく、ぽふりと頭を撫でられた。
「……うん」
…違う。
これは神田のことを考えて零れた涙じゃない。
もっと別のこと。
しまい込んだ心の奥底を、誰かに触られたような…そんな感覚。
一体、誰に?
「…大丈夫。ちょっと欠伸してただけだよ」
一呼吸置いて、ラビを見上げて笑いかける。
その目はきょとんと私を見て──
「…ホントさ?」
思いっきりジト目になった。
「雪ってすーぐ誤魔化し笑いすっからなー」
「何そのネーミング…ってまたッ!?」
「よーしよしよし」
「それ絶対面白がってるでしょ!」
「あ、バレた?」
頭をぐしゃぐしゃにしてくるラビの手を払って、距離を取る。
そうやって高い背丈利用して、人の頭好きにし過ぎなんだから!
ラビも神田も!