My important place【D.Gray-man】
第27章 夢現Ⅱ
「もう独りぼっちじゃないよ」
ね。と軽く首を傾げて、笑いかけてくる。
独り…ああ、確かに。
私はあの時、独りぼっちだった。
右も左もわからない道の真ん中で、転んで怪我した足を引き摺って、情けなく泣き続けていた幼い私。
「ロード、全部いいところ持っていくのやめて下サイ♡ 我輩、置いてけぼりデス♡」
「だぁめ~、これは千年公でも譲らないよ。雪の涙を拭いてあげるのは、ボクなんだから」
涙?
「だから、ね。もう泣かなくていいよ」
細い少女の指先が、私の目元に触れる。
「………あれ」
じわ、と滲む世界。
見上げて微笑んでくれる少女の顔が、ぼやける。
「よしよし」
見上げていたはずの少女の目線が、私より高くなっていく。
どんどんと低くなる自分の目線に、連動するように視界は滲む。
そんな私の目元を拭う少女の声は、ずっとあやすかのように優しくて。
「ボクには隠さなくていいよ。雪のその姿」
優しく促すように、そう囁きかけられた。
私の…この姿?
「誰だって持ってる、弱い心。ずっと一人で抱えてたんだね」
低い私の目線に合わせて、少女が屈む。
「言ったでしょ。ボクがちゃんと、見つけてあげたからって」
──あ。
そうだ、確か。
両腕を広げて私を迎えてくれたんだ。
「だからね、雪。帰っておいで」
広げられる両腕。
迎え入れるように、優しく促してくる声。
滲んでぼやけた視界は、よくは見えなくて。
それでも何故か理解できた。
…ああ、多分。
この腕の中は"大丈夫"。
──きっと。
「雪?」
カチ、と何かが外れる音がした。
「おい、雪って」
再度、呼ばれる。
「……?」
月明かりに照らされた夜の湖。
それを眼下に、バルコニーの柵に手をかけて立っている自分。
……あれ?