• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第27章 夢現Ⅱ



「其処にいたら捕まっちゃうよ。だから逃げて」



 だから、其処って何処──



「黒の教団デス♡」



 胸の内に応えたのは、おじさんの声だった。



「貴女のメモリーはまだ覚醒していまセン♡ その状態では、我輩達は貴女の居場所を特定できないのデス♡」

「教団にいたらボク達は手が出せない。だから雪が其処から逃げてくれないと。ボク達じゃ雪を守れないの」



 守るって…何を言ってるんだろう。
 まるでそれじゃあ、教団が悪者みたいだ。

 なんで見ず知らずの人達に、そんなことを言われなきゃいけないのか。
 私は自分の意思で教団にいるのに。
 今更何も持っていない私を、教団が必要としたりしない。

 それに…確かに嫌な過去もあそこにはあるけど、それだけじゃない。
 …見つけられたから。
 私が、あそこで見ていたい人を。



「…ダメだよ」



 きゅっと、私の手を握る小さな褐色肌の手が力をこめる。
 そこに意識がつい向いて、思考は中断された。



「そんなのダメ。雪が悲しむだけだから」

「なんのこと…?」



 少女の声は、親身に私を心配するような響きで。
 この子のことを知らないのに、何故かほんのりと胸が温かくなった。


 ──いけない


 同時に、何故か気持ちが強く否定する。


 ──私はただの人間

 ──"  "なんかじゃない



「…違う…」



 あれ、なんだろう。
 踏み込んじゃいけないって、気持ちが心を否定する。


 ──私が望んだのは、ただの人間

 ──"  "なんかじゃない

 ──私は…



「そぉだよ。雪は人間。ボク達と同じに、ね」



 そっと、両手で手を握ってくる小さな褐色肌の少女。
 "同じ"だと口にするその響きは、とても優しかった。

/ 2637ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp