My important place【D.Gray-man】
第27章 夢現Ⅱ
「其処にいたら捕まっちゃうよ。だから逃げて」
だから、其処って何処──
「黒の教団デス♡」
胸の内に応えたのは、おじさんの声だった。
「貴女のメモリーはまだ覚醒していまセン♡ その状態では、我輩達は貴女の居場所を特定できないのデス♡」
「教団にいたらボク達は手が出せない。だから雪が其処から逃げてくれないと。ボク達じゃ雪を守れないの」
守るって…何を言ってるんだろう。
まるでそれじゃあ、教団が悪者みたいだ。
なんで見ず知らずの人達に、そんなことを言われなきゃいけないのか。
私は自分の意思で教団にいるのに。
今更何も持っていない私を、教団が必要としたりしない。
それに…確かに嫌な過去もあそこにはあるけど、それだけじゃない。
…見つけられたから。
私が、あそこで見ていたい人を。
「…ダメだよ」
きゅっと、私の手を握る小さな褐色肌の手が力をこめる。
そこに意識がつい向いて、思考は中断された。
「そんなのダメ。雪が悲しむだけだから」
「なんのこと…?」
少女の声は、親身に私を心配するような響きで。
この子のことを知らないのに、何故かほんのりと胸が温かくなった。
──いけない
同時に、何故か気持ちが強く否定する。
──私はただの人間
──" "なんかじゃない
「…違う…」
あれ、なんだろう。
踏み込んじゃいけないって、気持ちが心を否定する。
──私が望んだのは、ただの人間
──" "なんかじゃない
──私は…
「そぉだよ。雪は人間。ボク達と同じに、ね」
そっと、両手で手を握ってくる小さな褐色肌の少女。
"同じ"だと口にするその響きは、とても優しかった。