My important place【D.Gray-man】
第27章 夢現Ⅱ
「それじゃあ、挨拶しないとねぇ」
挨拶?
「こんばんワ、我が兄弟♡」
「ボク達、これから家族だよ~」
並んだ二人の謎の人物が、親しげに声をかけてくる。
"家族"という、私には全く関連のない言葉を吐いて。
……。
……………。
………………ええと……とりあえず、
「ごめんなさい、間に合ってます」
断っておこうかな、うん。
なんか誘い方が悪徳勧誘っぽい。
「わぁ、フラれちゃった★」
「家族なら普通がいいです。できれば日本人で。褐色の肌の兄弟とか、どう見たって異人です」
今時、そんな陳腐なキャッチコピーに引っ掛かる人なんていないから。
それにこの二人の肌は褐色で、明らかに異人だとわかる。
おじさんと幼女の異人兄弟なんて、なんかマニアックだから遠慮しておきます。
「肌の色は、切り替え可能デスヨ♡」
まじですか。
もう人じゃないですそれ。
「人外は論外です」
「………グスン♡」
「あ。千年公泣かせた~」
嘘、泣いてるの。
そのおじさん、泣いてるんですか。
「人外って酷くないデスカ…我輩、人間デス…♡」
「もぉ、すぐ泣くんだから。雪が驚いちゃうよ」
え。
なんで私の名前知ってるの、この子。
「なんで…」
「あ、名前? ティッキーに教えてもらったの。可愛い名前だね、雪って。ボクその響き気に入っちゃった」
驚く私のその言葉だけで、意図を察した少女はころころと可憐に笑った。
「ねぇ雪。キミが大事な家族だから、ボク達は忠告しに来たんだよ」
おじさんの背中を擦っていた少女が、ふわ、と足音もなく歩み寄る。
私の手に重なる、小さな褐色肌の女の子の手。
「ずっと其処にいちゃダメ」
其処?
「"怒"のメモリーは、ボク達の中で特に強烈なんだ。一度零れたら溢れちゃう」
何、"怒"のメモリーって。
訳のわからないことを口にするその声は、高い少女のものなのに。
親身に心配するような声は、少女らしかぬ響きを持っていた。