My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
「部屋の手配してくるから。二人共此処で体休めてて」
「あ、はいっス」
「おー」
てきぱきと荷物を片して宿屋の受付に向かう雪を、脱力気味にソファに座って見送る。
雪もオレと同じで疲れてるはずだろうけど、サポート面では一切妥協しない。
相変わらずファインダーの鏡さなぁ。
そういや、あのイノセンスと同化してた水がピリピリするって痛がってたけど…怪我とかしてねぇのかな。
…怪我してたらオレ、ユウに刻まれるさ。
「てか、ユウがあんなこと言うなんてなぁ…」
思わず口から漏れたのは、あまりに予想外だったからか。
『こいつが怪我して帰ってきたら刻むぞ』
雪がユウに特別目を向けていたのは、とある夜中に立入禁止の書庫室隅で出会ってからなんとなく察していた。
でもまさかユウも同じように雪を見ていたなんて。あの誰に対しても無関心だったユウが。
任務説明中にコムイがニヤけてたのは、多分そんなユウを見たからさな。
やっぱユウと雪を組ませてんのは、あいつの策略な気がする。
まぁでもついコムイの所為にしちまったけど、場数踏んで慣れたからって、それだけでユウが他人に心を許すような奴じゃないことは充分わかってた。
それなら雪より長い付き合いのリナリーに心許してるはずだろうし。
なのにリナリーじゃなく雪に目を向けてんのは、きっとユウもちゃんと雪を見たからだ。
普段はオレと同じで他人と一歩距離を置いてる雪だからわかり難いけど、ちゃんと見てみれば芯を持った女性なんだってわかる。
他人に無闇に見せることなく、自分の内に思いを秘めて真っ直ぐに一人で立ってる。
強そうに見えて儚くて、儚そうに見えて強い。
そんな雪だからオレも惹かれたのか、それはわかんねぇけど。
『オレには頼れねぇ?』
なんであんなことを言ってしまったのか。
多分、雪の気持ちがユウに向いてるって、そう、はっきりわかってしまったからかもしれない。