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My important place【D.Gray-man】

第26章 ワレモコウ



「ほ…本当に、何か見えたんスか…?」


 恐る恐る水晶玉を持ち上げたチャオジーが、色んな角度から水晶玉を覗く。
 オレの目から見ても、その玉はさっきから何も変わらないただのガラス玉だった。


「人の"死"は…前にも見たことがあるから…間違いないです」


 小さく頷くメイリンの顔は暗い。


「……それがもし本当に誰かの"死"の未来なら…回避はできないのかな」

「え?」


 不意にそう問いかけたのは雪だった。


「例えば事故死なら、その場所にその人を近付けさせないとか…未来がわかっているなら、回避もできるかも」

「それは…わかりません。でも、私の身近な人の"死"が見えた時は……必ず起こり得る未来でした…」


 力なく首を横に振るメイリンに、その場に沈黙ができる。

 死後の世界がどんなもんかなんてわかんねぇけど、人の死ってもんは絶対だ。
 いつか必ず起きること。
 遅いか早いかの違いだけ。

 そんな自然の摂理を人の手で止めることが、果たして可能なのか。
 現実的に考えれば、それは不可能さ。


「……」


 暗く陰っていたメイリンの表情の意味が、これでわかった。

 人の"死"を目の当たりにしながら、それを助けてやることができない。
 そんなことを何度も繰り返せば、赤の他人の"死"でも怯えるようになる。

 …色々抱えるには、メイリンは幼過ぎるんさ。


「…でもメイリンのその占いのお陰で、私は助けてもらえたよ」


 ぽつりと、静寂を破ったのは雪が零した言葉。


「メイリンやラビがいなかったら、あの場で変なことされてたかもしれないし」

「変なこと? ってなんスか?」

「あー…まぁ色々」


 きょとんと問いかけるチャオジーに苦笑混じりに応える雪を、メイリンの目がじっと捉える。

 それは…多分、オレやメイリンがいなくたって結果は変わらなかったと思うけど。
 でも雪の腕っ節を知らないメイリンには、大きな言葉だったらしい。


「…そう、ですか…?」


 どこか縋るように雪を見る。

 赤の他人の"死"にさえ、こうやって怯えるんさ。
 きっとその心は他人を思う優しい気持ちを持ってる。

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