My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
「なんか見えてるんさっ?」
メイリンはランダムで、誰かの未来が水晶玉に見えるって言っていた。
雪の露店での未来も、きっとこんなふうに見えたんだろう。
じゃなきゃ、こんな夜中に小さな少女が起きてる方が不思議さ。
オレ達の目には水晶玉には何も見えない。
でもきっと、こうしてメイリンには強烈に誰かの"未来"が入り込んでくるのかもしれない。
「無理して見ないで、メイリン!」
咄嗟に傍にいた雪が水晶玉に手を伸ばす。
バチッ!
「っ!」
強い静電気のような音が響いて、雪の手が弾かれる。
その衝撃で、メイリンの手に握られていた水晶玉はその場に転がり落ちた。
「わ、とと…だ、大丈夫っス。割れてませんよっ」
慌てて転がった水晶玉を確認するチャオジーに、ふらふらと力を失ったようにメイリンはソファに座り込んだ。
「…大丈夫? メイリン…」
「ぁ…は、い」
同じように隣に座って顔色を窺う雪をちらりと見て、再びその目は床に転がった水晶玉に移る。
どんな"未来"が見えたかわかんねぇけど…いいもんではなさそうさな。
「いつもそうやって見えてるんさ? 人の"未来"」
「…はい、」
そっと歩み寄って、メイリンの目の前で屈み込む。
目線を合わせるようにして問いかければ、暗い顔で少女は頷いた。
「普通に見えるものは…なんでもないんです。お姉さんのお店での"未来"のようなものなら…」
深呼吸をしながら息を整えて、再びその目は床に転がる水晶玉に移る。
「でも…人の…"死"が、見える時が…時々、あって…」
そこまで言って、か細い声は途切れた。
俯いて黙り込むメイリン。
その姿に、何が見えたのかは明白だった。
恐らく、誰かの"死"を見たんだろう。
「……」
こんな10代そこそこの少女に、人の死に様の映像なんてキツ過ぎる。
例えそれが知らない誰かのもんであっても、本当に起こることなら無視もできない。