My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
「大丈夫ですよ、此処からそう離れてませんし」
「でも…」
笑って断るメイリンに、渋る雪が手を伸ばす。
その両手を、水晶玉を持つメイリンの手に上から重ねた。
「この村の大切な占い師さんだし。メイリンに何かあったら、此処まで連れてきた私の責任になるから。村の人に怒られちゃうよ」
「それは…でも…」
にっこり笑って言う雪のその言葉に、断わる言葉が見つからなかったのか。結局折れたのはメイリンだった。
やっぱ的確なこと言うよなー…雪って。
あれじゃ断れねぇさ。
「じゃあ私、メイリン送ってくるから」
「んじゃオレも行くさ」
「え? いいよ。ラビはチャオジーと休んでて」
「俺も行くっス!」
「ええっ。いいってば、二人共休んでないと。もう2時過ぎだよ」
慌てて首を横に振る雪には悪ィけど、折れる気はないんで。
いくら腕っ節あったって、危機感足りてねぇんだから。
雪になんかあったら、それこそユウに叩っ斬られるさ。
「うふふっ」
そんなオレらを見ていたメイリンが、不意に笑い声を上げる。
思わず口を閉じて、そこに目を向ければ。
「優しいんですね、皆さん」
ころころと、まるで鈴のように可憐に笑う姿があった。
…こうして見れば、普通に年相応の女の子なんさなぁ…。
喋り方がいやに大人っぽいから、最初はそう見えなかったけど。
「でも大丈夫ですよ、本当に──」
そうメイリンが言葉を続けた時だった。
「──っ!?」
不意にその顔の表情が固まる。
なんさ?
「メイリン?」
「ぁ…あ…っ」
「どうしたんスか?」
「ッ…ぃ、や…!」
よろよろとその場でふらつきながら、その小さな口から零れたのは悲鳴に近い声。
「メイリンっ!」
「な、なんスか!?」
ふらつくメイリンの体を雪が支える。
だけどその少女の目は雪やチャオジーを捉えておらず、真っ直ぐに手元の水晶玉に向けられていた。
…まさか。