My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
そんなメイリンの表情も気になったけど、それ以上にオレの目を止めたのは雪だった。
「………」
じっと水晶玉を見るその表情は、何か考え込んでいるようにも見える。
…そういや、
「雪、メイリンに占ってもらいたいって言ってたよな」
「え?」
珍しく女子っぽいこと言うもんだから、覚えてた。
…ってのは建前で。
雪が口にした言葉だから、覚えてたんだけど。
「でもランダムで未来予想するもんなら、占ってもらえないさ」
「ああ…うん、そうだね」
苦笑混じりに頷く雪は、予想していたより残念そうにはしていなかった。
「というか沢山の人が家に来てたのって、メイリンに占ってもらうっていうより…お告げみたいなもので聞きに来てたのかもね」
確かに、雪の言う通りかもしれない。
こんな少女が水晶玉で見る物事が全て本当になるとなれば、奇跡に思えても仕方ない。
占いっていうより、予知に近いからな。
周りが信仰的になっても可笑しくないさ。
「でも大変じゃないの? こんな夜中に、急に未来が見えたりしたら。落ち着かないでしょ」
「いえ…それで村の人達の手助けができるなら」
そんな雪の言葉に首を横に振るメイリンは、やっぱりどこか暗さが残る表情をしていた。
多分、あれは精一杯背伸びしてる顔だ。
こんな小さな子供に村人達の期待が向けば、少なからずプレッシャーになるだろうし。
「こうして、お姉さんのことも無事に助けられましたし。よかったです」
にっこりと笑うメイリンの言葉に、迷いはない。
まぁ…今回の場合は、オレやメイリンがいなくても雪一人で解決できただろうけど。
そこは黙ってた方がいいさな。
「ありがとう、メイリン」
「いえ、こちらこそ。ご馳走様でした」
礼を言う雪に笑顔を返し、食べ終えた中華まんの袋を丁寧に畳んでソファから立つ。
「私、そろそろ帰りますね」
「うん。送るよ、夜も遅いし」
そんなメイリンに続こうとする雪。
もうすっかり夜中だし。
いくら慣れ親しんだ村ん中でも、こんな少女一人で夜道は危ない。