My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「これで一件落着さ?」
「うん。後はチャオジーを捜さなきゃ」
「チャオジーの奴、無事だといいけど…」
再び灯り用に"火判"を発動させた鉄槌を肩にかけて、ドアへと向くラビを見る。
こちらを向かない背中を確認したまま、恐る恐るその鉄槌に指先を伸ばした。
軽く触れた指先は弾かれることなく、拒絶も何も起こらない。
今までもイノセンスの原石に触れたことはあるけど、あんなふうに拒絶されたことはなかった。
武器として加工する前の結晶は、力の制御ができない。
だから拒絶されたのか、理由はわからないけれど。
水の鏡越しに見えた、私の傍に立つ白い人影。
「奴を許すな」と口にしたあれは、恐らくきっと──
「雪」
「え?」
名前を呼ばれてはっとする。
いつの間にかこちらを振り返っていたラビが、私を見ていた。
いけない。
「ごめん」
「チャオジー見つけたら、早くこんな所出るさ」
「うん」
催促するその視線に、慌てて小走りで隣に並ぶ。
「でももう怪奇現象は起きないと思うよ。イノセンス回収できたんだし」
「だとしても、こんな所ずっといたくねぇって」
まぁ、その気持ちはわかるけどね。
ラビが古びたドアノブを掴む。
あんなにビクともしなかったそれは、やはりイノセンスを回収したおかげか。すんなりと開いて──
「…あ。」
「うえ」
目の前のそれに、思わずラビと顔を顰めた。