My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
「ええっ! こんな小さな子がっ?」
借りた宿屋のツイン部屋。
其処で驚きの声を上げるチャオジーに、ソファに座っていた少女が控えめに苦笑する。
フード付きのマントを脱いだ姿は、此処の村人となんら変わりない普通の中国人少女だった。
『メイリンって…もしかして、占い師の…?』
『私のこと、知ってるんですか?』
引っ掛かるその名前につい問えば、迷うことなくその少女は頷いた。
あの朝方に村で聞いた、絶対に当たる占い師だってこと。
…ってか、
「美人おねーさんじゃなかったさ…」
そこちょっと期待してたのに…残念。
「でもどうして、こんな夜中に歩いてたの?もしかして何か用事があったり…」
「いいえ」
ソファで貰った中華まんを口にしながら、メイリンは気遣う雪に笑顔で首を横に振った。
「家にいたら、お姉さんのさっきのお店での"未来"が見えたので。教えてあげなくちゃって、思って」
「見えたって…もしかして、それが占いの?」
「そうです」
頷いたメイリンが、その肩に掛けていた小さな鞄から水晶玉を取り出す。
透き通るように丸い、見た目は極普通の水晶玉。
「私、物心ついた時からこの水晶玉に映し出される"未来"が見えていたみたいで…いつも傍に持ち歩いているんです」
「へぇ~! これで占いをやってたんスね!」
興味津々に水晶玉に顔を近付けるチャオジーに、オレも興味が沸いた。
占いなんてあんま信じちゃいねぇけど、メイリンの占いはどこか特異に思えたから。
占いっていうより、まるで"予知"みたいなもんだな。
「でも私とは初対面だし…もしかして、知らない人の"未来"も見えるの?」
観察するようにまじまじと水晶玉を見る雪に、メイリンはこくりと頷く。
「はい。…ただ、水晶玉が映す"未来"は人も時も様々で。私が見たいものを見られる訳じゃないんです」
「ふーん。つまり、自動で未来予想してくれるってことさな」
「凄い水晶玉っスねぇ」
思わずチャオジーと感心すれば、どこか暗い顔でメイリンは苦笑した。
…なんさ?