My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「ユウが無愛想な分、オレがサービスしててやるさ」
「うわ、その言い方なんか卑猥。というかいい加減離して欲しいんだけど」
「えー。折角だし、いいじゃん少しは」
「うわーセクハラ。セクハラ兎がいるー」
「だから兎呼びやめろって」
こうやってすぐ砕けた会話ができるのは、ラビとだから。
その心地良さは、きっとラビだから貰えるものなんだよ。
だから…うん。いい加減離してくれないかな、本当。
チャオジーに見られたら恥ずかしいから。
「もう、チャオジーが戻って来るから…」
──パシャッ
再び聞こえた、水が跳ねる音。
あ。
「また鼠さ?」
「チャオジーかも」
またドアの向こうから聞こえるそれに、二人して顔を向ける。
──パシャッ
もう一度、水が僅かに跳ねる音がして。
『ラビさん、雪さん』
ドアの向こうから聞こえたのは、チャオジーの声だった。
やっぱり。
「ほらっチャオジー戻ってきたからッ。うん、おかえり!」
「へいへい」
ドアの向こうに声をかければ、すんなりとラビの両腕が離れる。
『ここ、なんか開かないんスけど』
「え?」
「へ?」
だけど次に聞こえてきた言葉に、思わず二人して動きが止まってしまった。
今、なんて?
「嘘、鍵なんて付いてないのに…」
一瞬、驚きはしたものの。こんな水浸しの部屋だし、ドアの蝶番でも錆び付いたりしてたのかな、と思い直す。
「チャオジーのイノセンス使った怪力なら、余裕で開けられるんじゃねぇさ?」
「そんなイノセンスを乱用させないの」
「オレのイノセンスを乱用した奴が何言ってるんさ…」
相変わらずの砕けた話をしながら、ラビと一緒にドアへと寄る。
床一面の水溜りは、変わらずピリピリとした僅かな違和感を私の足に伝えてくる。
『開けてくれますか? ラビさん、雪さん』
「うん、わかった」
内側から開けてみようと、古びたドアノブに手をかける。
でも。
「あれ?」
ドアノブを回して強く押しても、ビクともしない。