My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
多分同じようなことを、雪もオレに感じていたと思う。
『へー、ブックマンって大変なんだねー』
『…雪、すげー棒読み』
『建前でも欲しいなら、同情するけど』
『いーや、んなもん遠慮するさ』
『でしょ』
言葉を交わす程に、砕けた話はすぐにできるようになった。
お互いに丁度良い距離で話しているから。
雪自身がそれを嫌っているのか、同情なんて向けてこないから、あっさりとブックマンとして抱える自分の思いも話すことができた。
"教団の中で話し易い人間"
雪はただそんな位置付けで、オレの中にあった。
…その気持ちを変えたきっかけは、きっとあれだ。
『…何笑ってやがる。気味悪い』
『なんでもない、気にしないで』
そう、ユウに向けて見せた表情。
初めて見た、感情が溢れた雪の素の笑顔。
驚いた。
そんな顔ができるんだって、初めて知って。
んで、羨ましいと思った。
オレと同じだと思ってたのに。
雪はオレと違ってた。
そういう顔を見せられる相手を、ちゃんとこの教団で見つけてたから。
なんさ、やっぱユウはモテるんさなー。
くらいの思いでその時は片付けたけど…あれは後になって思えば、そう自分に言い聞かせてたんだと思う。
羨ましかったから。
雪のそんな顔を引き出したのが、オレじゃなくユウだったことが。
そして雪の過去を知ってしまったことを、オレは後悔した。