My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
気にはなったけど、ここで突っ込んで変にボロが出るのが怖くて、それ以上ラビに問いかけることはできなかった。
私の知らないアレンのことを、何かラビは知ってるのかな…。
二人の間にできる、どこか重い沈黙。
ラビとこんな空気になったことは今までなかったから、どう声をかけていいのかわからない。
下手なことを言ったら、相手は頭の回るラビだから。もしかしたら隠しているノアのこと、変に勘付かれてしまうかもしれない。
でもここで黙っていても駄目だと思う。
何か明るい話題でもしなきゃ。
そう思って、咄嗟に口を開いた。
「ねぇ、ラビ──」
瞬間、
──パシャッ
重なったのは水が跳ねる音。
「な、なんさ…!?」
「お化けっ!?」
急な音に、ラビと引っ付いて音が聞こえたドアの向こうを凝視する。
キキッ
続いて聞こえたのは、小動物のような鳴き声……え?
「…鼠?」
「な、んだ…吃驚した…ッ」
タタタ、と去っていく小さな足音に、二人して縮み上がったまま固まる。
本当にビビった、今の…!
「はぁ…心臓に悪いから…」
そのまま脱力気味に力を抜いて、溜息混じりに体を離す。
「早くチャオジー戻ってきてくれないかな…」
否。
「…ラビ?」
離そうとした体は、別の力に止められた。
恐怖で寄せていた体は、ラビの手がしっかりと背中に腕を回していて離れられない。
「どうしたの。まだ怖い?」
私と同じに怖がりなラビだから、顔色を伺うように問えば。その顔を隠すかのように、ぽすりと額が私の肩に乗っ…ん?
これは…その…どういう意思表示?
「大丈夫だよ、ただの鼠だから。多分」
ぽんぽんと、背中を落ち着かせるように軽く叩く。
「……オレじゃ駄目さ?」
え?
「ユウには言えて、オレには言えない?」
静かに、でも確かに。
ラビは私の肩に額を乗せたまま、神田の名前を口にした。