My important place【D.Gray-man】
第26章 ワレモコウ
『神田は神田で、チャオジーはチャオジーだよ"』
そう、何か思い出すように口元に緩く笑みを浮かべる雪は、オレの知らない"顔"をしていた。
それに似た顔を見たのは、コムイの迷惑なゾンビウイルスの事件に巻き込まれた時だった。
たった一度だけ見た、雪がユウに足の手当てで礼を言った時の顔。
年相応に笑う、素直な顔。
そういう顔は初めてだったから、目に焼き付いた。
──…雪に近付いたのは、単なる興味本位だった。
"イノセンス不適合者でありながら、咎落ちにならなかった唯一の実験生存者"
オレの興味をそそるには、充分な情報だった。
一体どんな奴なのか。
余程体が頑丈な奴か、単なる偶然で咎落ちを真逃れた奴か。
『初めまして。オレ、ラビって言うんさー』
『…………兎?』
『いやそれ違う』
愛想よく笑顔を張り付けて挨拶をしたら、まじまじとオレを見ての第一声がそれ。
それも束の間、すぐに罰が悪そうに笑った。
『ああ、ごめん。新規入団したエクソシストの人でしょ。私は探索班の月城雪っていうの。任務で一緒になった時は、よろしく』
軽く笑って握手をしながら、当たり障りない自己紹介と挨拶。
その時は、予想と違う普通の奴だったんさなー、くらいにしか思わなかったけど。
それから何度か言葉を交わして、任務でも一緒に同行するようになれば、すぐに雪がオレと"同じ"だって気付いた。
オレと同じで当たり障りなく周りと接していて、仲良くしているようで心の奥では一歩距離を置いてる。
雪の持つその過去故か、それはわからなかったけど。
同じにオレとも距離を置いてたから、話し易い奴だなってくらいには思えた。