My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
聖痕が全て浮かんでからは、あんなに頻繁に起きていた頭痛はぱったりと止んだ。
理由はわからないけど、そこは地味に助かってる。
度々頭痛に襲われるのは、それなりにしんどかったから。
「そーいや、そこ。割と治るの時間かかってるんさな」
「え?」
ラビの目がじっと額の絆創膏を見る。
人間観察が得意で頭の回るラビに、そこに目を止められるのは内心焦った。
「額だけ怪我って、一体どんな攻撃受けたんさ」
「…額を鷲掴みにされて力任せに絞られた、みたいな」
「うえ。よく潰されずに済んだな」
「幸運でした」
適当に言えば想像したのか、ラビの顔が歪む。
うん、そんな攻撃私も受けたくない。
「雪も女なんだから、顔の怪我は気を付けろよ」
「おお。兎さん、私のこと女として見てくれてたの」
「その前に雪は、オレのこと人として見ろよな。兎じゃねぇから」
内心焦る問いをかけられても、すぐこうして砕けて話せるのはやっぱりラビとだから。
この距離感は、やっぱり私には丁度いい。
「そーいやさ」
「うん、なぁに?」
「昨日、結局何処に行ったんさ? ティムと」
視線を水溜りに向けながら相槌を打っていると、不意な質問をされた。
「あの後アレンに雪とティムのこと伝えたら、血相変えてどっか行っちまってさ。…あれ多分、雪と同じ所に行ったんだろ?」
思わず視線をラビへと変える。
視界に映ったラビは、目の前の水溜りに視線を向けたまま話し続けていた。
あの時頼んだことをラビは守って、アレンに伝えてくれてたんだ…。
「夕方に食堂で見かけた時は、アレンにユウも一緒だったし。あれ、ユウも同じ所にいたんじゃね?」
流石次期ブックマン後継者。
そんな些細なことで、ずばり見破るなんて。
「結局、何処行ってたんさ」
「それは…ティムとの秘密だから」
どう応えたらいいのか。上手い返事が見つからない私に、静かにラビの目が向く。
透き通るような翡翠色の目。
眼帯で片方しか見えていないのに、それは強い存在感を放っていた。
「最近さ。雪って隠し事多いよな」
それは確信のある言い方だった。