My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
静まり返る部屋。
いつの間にか、あのドアの向こうのチャオジーの声も消えていた。
「!」
暗い部屋に、キラリと一つの光が灯る。
乾いた床に光るそれを見つけて、咄嗟に駆け寄った。
其処に転がっていたのは、
「髪飾り…?」
あの水跡を見つけた部屋で、チャオジーが私に見せてくれた古い髪飾りだった。
形も錆び具合も一緒だったけど、まるで宝石のようにキラキラと強く発光している。
間違いない。
「ラビ、見つけた! 多分これが源のイノセ──…っ」
伸ばした手で触れようとした瞬間。バチッ!と痛みが走って、手は弾かれた。
「雪…っ?」
後から駆け寄ってきたラビが、怪訝そうに声をかけてくる。
──駄目、なんでもないフリして。
「…イノセンス、見つかったよ。ありがとう、ラビ」
咄嗟に弾かれた手を庇うように空いた手で握って、ラビに笑いかける。
「ふー、世話焼かせんなさ」
その髪飾りに文句を垂れるように、声をかけながらラビが手を伸ばす。
なんなくその手は、発光している髪飾りを取り上げた。
そこに拒絶はない。
すると、パキン…と髪飾りはあっという間に崩れ、中からクリスタルのような結晶が現れた。
…ああ、やっぱり。
"これが君の父親のイノセンスだ"
全く同じ形じゃないけど、似通った形のそれはあの結晶と同じ。
私を拒絶し続けたイノセンス。
「…ラビ、マフラー使わせてもらうね」
「ん? ああ、」
借りていたマフラーを解いて差し出せば、ラビがそこにイノセンスの結晶をそっと乗せる。
そのまま隠すように、マフラーで包むと荷物にしまった。
「これで一件落着さ?」
「うん。後はチャオジーを捜さなきゃ」