My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
鉄槌から伝わる振動に、部屋が淡い光に照らされる。
その光の原因は、ラビを中心に浮かび上がる幾つもの文字の"印"から。
「"木判"」
その印の一つである、"木"の字に鉄槌の側面を叩き付ける。
すると淡い光を放ちながら、鉄槌の側面に"木"という字が焼き付くように浮かび上がった。
「それ…」
「まぁ見てろって」
ラビのイノセンスである鉄槌は、複数の攻撃技を持つ。
その中で"木判"は"火判"のような打撃系ではなく、自然物限定で影響を与える特殊系の技。
「"天地盤回(てんちばんかい)"!」
バンッ!と水の床に叩き付けられる鉄槌。
叩き付けられたその場に、"木"と書かれた巨大な文字が浮かび上がる。
「余計なもんは排除さ。"ただの水"なら、消えてなくなれ!」
そうラビが叫ぶと同時に、カッ!と床の"木"の字が強く光る。
一瞬目も眩むそれに、ラビの団服を掴んだまま咄嗟に目を瞑った。
「っ…」
シュワッとまるでミストのように、蒸気へと変わる水分が肌を撫でた。
「…ぁ…」
強い光が消えて、部屋が真っ暗闇に再び包まれる一瞬。見えたのは、壁に映し出されていた人影が蒸発するように消えていく様。
そして、足元のビリビリとした痛みが一斉に消えた。