第25章 Noah's memory

『なんか開かないんスけど』

「わかってんさ…！　こうなったらイノセンスで破るしか…っ」

『ラビさん、雪さん』

「それならチャオジーのイノセンスの方が適役だと思うから、チャオジーに任せていいッ？」

『開けてくれますか？』

「いや、だから…ッ」


　咄嗟にラビと声を張り上げていた中での、それは違和感。


『此処、なんか開かないんスけど』

「それもうわかって──」

「ま、待ってラビ…！」


　思わずラビの腕を強く掴む。


『ラビさん、雪さん』


　ドアの向こうから聞こえるのは、確かにチャオジーの声。
　だけど感情の起伏は一定で、さっきから発している言葉も同じものばかり。


『開けてくれますか？』


　ガチャガチャと、向こう側から回されるドアノブ。


『此処、なんか開かないんスけど』


　同じ言葉を、何度も繰り返しながら。


「……チャオジー…？」


　これ…本当にチャオジー？


『ラビさん、雪さん』

『開けてくれますか？』

『此処、なんか開かないんスけど』


　何度も、繰り返し繰り返し。
　それはまるであの人形が一定に出していた"声"のように。


「ら、ラビ…」

「これ…チャオジーじゃねぇさ…」


　思わずお互いの腕を掴んで、ドアから後退る。


「チャオジーじゃないなら、なんなの…」

「オレが知るかよ…」





『チャオジーっス』





「「！」」



　まるで私達の声に応えるかのように名乗るその"声"に、びくりと二人で体を跳ねさせた。