My important place【D.Gray-man】
第5章 夢Ⅱ
夢を見た
…ような、気がする
「…なんで俺?」
「だぁって、ボクの力だけじゃ精々夢の中に入り込むことしかできないんだもん」
「いや、だからなんで俺。それならワイズリーにでも手伝ってもらえばいいだろ」
「ワイズリーは千年公とお買い物中~」
多分、夢
知らない誰かの声が、二つ聞こえるだけの
一つは、高い女の子の声
もう一つは、成人男性であろう低い声
どちらも知らない声だった
「また? ついこの間も買い物行ってなかったっけ」
「ハンバーグの材料が切れちゃったから」
「またハンバーグかよ…」
「千年公の得意料理だからねぇ」
というか知らない声が勝手に私の夢の中で雑談してる
何を話しているのか
はっきり聞こえてるはずなのに、何故かぽろぽろと思考の隙間から抜け落ちていくように、よく聞こえない
「いいから早く。長くは保たないの」
「はぁ…ハイハイ。わかりましたよ」
真っ暗な闇
だけど心地良いそれは、深い眠りのようで
ぼそぼそと聞こえる二つの声は気になったけど、それよりただ寝ていたかった
邪魔しないで欲しい
「お嬢さん」
…お嬢さん?
「そこ。自分のことね。他に誰もいないから」
急にはっきりと耳元で声が聞こえた
まるで囁くように、すぐ傍に誰かがいるようだった
「まだ、"はじめまして"かな?」
まだ?
言ってる意味がわからない
…ああ、夢っていつも取り留めないものだから
これもそうなのかな
「まぁ確かに夢っちゃ夢だけど。それより、お嬢さん」
再度、呼び掛けられる
声は知らない男性のもので
その"お嬢さん"って呼び方、あまり好きじゃない
なんだか声の主の言い方は、酷く慣れた様子で
甘ったるいその呼び方は、好きになれそうになかった
「あれ、そう? 嫌がった人はお嬢さんが初めてだな」
だからその呼び方はやめてって──
「じゃあさ。お嬢さんの名前、教えてくれる?」
…………夢がナンパしてきました