My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
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パキ、パキ…
木屑を砕く足音が、静かな廃墟内に響き渡る。
「でも人形を探すったってなー…結構広いさ、此処」
「あの水跡をまた見つければいいんじゃないですか?」
「でもそれらしいもの、何処にもないね…」
三人で足元を灯りで照らしつつ各部屋を回ってみるけど、それらしい水滴の跡もさっきの人形も、何も見つからなかった。
「雪、今何時?」
「んーっと…0時5分前」
「もうそんな時間なんスね」
辺りを探しているうちに、炎の消えかかった灯りは二度程変えた。
もうアルコールはない。
止血用の布は一枚しかなかったから、代用にファインダーのマントを裂いて使ったからもう半ばボロボロ。
そんな状態のマントを身に付けてても邪魔にしかならないから、脱いで荷物に押し込んだ。
「次から布は多めに入れておこうかな…」
溜息をつきつつ、荷物を背負い直す。
「雪さん、寒くないっスか?」
「ん? 大丈夫、体鍛えてるし」
「でも…あ、じゃあ俺の団服着てて下さい。保温性ありますし」
「いいよ、それはエクソシストが着るものだから」
ズボンと下の服一枚だけの私を、チャオジーが気にかけてくれる。
軽く笑って返せば、心配そうな表情を残すもののチャオジーは大人しく引き下がった。
…うん。
きっとこういうところが、誰にでも好かれるチャオジーの良いところなんだろうな。
「んじゃ、気休め程度に」
「ぅぷっ」
すると後ろから、ずぼっと何かを被せられる。
口元をすっぽり覆うように上から被せられたのは、明るい色のマフラー。
「それ巻いてろよ」
振り返れば、自分のマフラーを外して私に被せるラビがいた。
「…ありがとう」
「ん、」
結構長いマフラーだから、ぐるぐると巻くと口元をすっぽり覆ってしまう。
なんとか手で口元のマフラーを押さえながら礼を言えば、ラビは軽く肩を竦めて応えた。
確かに気休め程度かもしれないけど…さっきまでラビが身に付けてたからか、割とあったかい。
…ラビもこういう優しさ、時々あるよね。
スマートに行動するアレンとはまた違った、ラビらしい優しさ。