My important place【D.Gray-man】
第25章 ノア メモリー
「ん?」
村の外に向かっていると、ふと賑やかな音を耳にした。
見れば、とある一軒家の前に行列が見える。何かのお店かな。
「美味いもんでも売ってるんさ?」
行列を見ながら興味津々に呟くラビに、つい私も興味が沸く。
「でも食べ物の匂いはしませんけど…」
確かにチャオジーの言う通り。
飲食店じゃなさそうだけど…そもそもお店かどうかも疑わしい。
看板らしいものは何もない。
「メイリン、今日は何を教えてくれるかな」
「早く見てもらいたいね」
行列の中に並んでいる二人組の女の子から、楽しそうな会話が届く。
見てもらうって、なんなんだろう。
どこか意味深なその会話に、なんとなくラビと顔を見合わせる。
「どーも♪ ちょっと話いいさ?」
「え?」
「えっと…旅人さん?」
それから目線を女の子に戻すと、徐にラビは笑顔で二人に声をかけた。
相変わらずフットワークが軽いというか。
なんだかナンパ男さんに見えますよ。
10代そこそこくらいだろう、幼い顔を向けてくる女の子達は不思議そうにラビの顔をまじまじと見上げてくる。
ラビみたいな赤毛に緑目なら、どう見たって地元民じゃないし。旅人にも見えるんだろうな。
「うん。偶々この村に立ち寄ったんだけど、ここ何かのお店なのかな?」
ラビの隣で笑顔で問いかければ、女の子達はきょとんと顔を見合わせた後にすぐ笑いかけてくれた。
「お店じゃないよ」
「メイリンのおうちなの」
メイリン?
女性の中国名、かな。
「メイリンはね、未来が見える占い師なんだよ」
「いっつも絶対に当たるの!」
まるで自分のことのように誇らしげに伝えてくる二人は、とても嘘をついているようには見えない。
となると、どうやら本当らしい。
「百発百中の占い師ってことさ?」
「そんな凄い人いるんですね」
ラビとチャオジーの会話を耳にしながら、改めてメイリンがいるであろう家を見上げる。
極々普通の一般民家だ。
大々的に占い師なんて宣伝はしていない。
なのにこれだけの人の行列を作らせるってことは案外、本当に凄い人なのかも。