My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
「な、何が起こってんの…?」
「俺達、ずっと階段下りてましたよね…?」
「何がって、どう考えても可笑しいだろこれ」
三人で顔を青くしながら、見上げる階段の先の廊下。
『キャハハハハ』
『あたしエリー』
『なかよくしてね』
其処から一定で聞こえてくる、人形の高い"声"。
明らかな怪奇現象に、背筋がぞっとする。
廃墟を出ようとしているのに、階段を下りても下りても外の扉に辿り着かない。
「っ…出られないなら、原因解明するまでっス…!」
「わ、馬鹿チャオジー!」
「待って、チャオジー!」
ぐっと歯を食い縛って階段を上がっていくチャオジーを、二人で慌てて追う。
本当、エクソシストの鏡ですね!
「あれ?」
だけど先頭を立って階段を上がりきったチャオジーから漏れたのは、どこか抜けた声。
「何、どうしたの──」
慌てて灯りを手に近付いて、その声の原因に気付いた。
「…人形が…」
「…消えた…?」
さっきまでつい其処で声が聞こえていたのに。ラビが放り出した古びた人形は、忽然と姿を消していた。
気付けばあの"声"も、ぱったりと止んでいる。
…なんで。
「…まさか、イノセンスが原因なんさ?」
「可能性はあるかも…」
「あの人形がイノセンスかもしれませんね…」
静寂の中、ぽつぽつとお互いに言葉を交わす。
本当にイノセンスなら、このまま放っておく訳にはいかない。
ちゃんと回収して帰らなきゃ。
「探しましょうっ」
「げ。まじかよ」
「出られないなら、探すまでです」
やる気に満ち満ちた声で言うチャオジーとは反対に、顔を青くするラビ。
ラビのその気持ちは痛い程わかるけど…でも。
このまま出直して、人形が見つからなかったら確かに困る。
「…うん、そうだね」
「雪っ?」
「雪さんっ」
頷けば、驚くラビの声と嬉しそうなチャオジーの声が重なった。