My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
三人で唖然と立ち竦む中、真っ先に動いたのはラビだった。
「に…っ逃げるさ!」
「うわっ!?」
「わ…!」
人形を放り出したかと思うと、ラビの手が強くチャオジーと私の手首を掴む。
顔面真っ青で。
「ま、待って下さいラビさん! 怪奇現象なら、イノセンスが関係してるかも…!」
「んなもん明日昼間に調査すりゃいいだろ! 今はオレ無理!」
「痛ッ…! ラビ引っ張り過ぎ…!」
なんとか灯りを取り落とさないようにしながら、ぐいぐいと強い力に引き摺られて階段を駆け下りる。
チャオジーは納得してないみたいだけど、こればっかりは私もラビに賛成だった。
昼間、明るい時にまた調査しよう。
夜は流石に怖い。
というかあの人形が怖い。
「とにかく早く此処を出るさ…!」
バタバタと、何回も階段を駆け下りる。
左へと回って、ぐるぐると螺旋のように。
腕を掴むラビに、引っ張られるままに。
左に回って。
また左に回る。
「っ…」
そしてまた左。
「…ね、ねぇ…っ!」
ちょっと待って。
「これ、何処まで下りるの…っ!?」
さっきからずっと階段をぐるぐると下りてるのに、全然一階まで辿り着かない。
「はぁ…っ…なんさこれ…ッ?」
流石にラビも不信に感じたらしく、足を止める。
窓の外に目を向ければ、何度も階段を下りてるはずなのに、変わっていない目線の高さの景色。
『キャハハハハ』
「「「!?」」」
後方から聞こえてくる笑い声に、三人で体を跳ねさせる。
──まさか。
「……」
恐る恐る振り返る。
…なんで。
何回も階段を走って下りたはずなのに。
『あたしエリー』
すぐ目の前の上り階段の先。
其処に転がっているであろう、古びた人形から。
『なかよくしてね』
機械的な少女の声が、一定に鳴り響いていた。