My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
「チャオジー、あんまりそれで遊ばないで。なんか怖いから」
「そーさ。そんなもん早くそこに置けってッ」
「え…と、はい」
青い顔で言う私達に圧されて、チャオジーが大人しく人形を元の水滴の上に戻す。
『あたしエリー』
『なかよくしてね』
それでも、人形から出る"声"は止まらない。
「あれ?」
「うわ…濡れて壊れちゃったのかな…」
「こんな所でそんな音出してんの不気味さ。止められねぇの?」
青い顔したラビが、真っ先に人形に手を伸ばす。
よっぽど怖いんだろうな。
人形の背中を見たり引っくり返したり、中の機械のスイッチでも探してるんだろう。
確かにこんな場所でそんな声、聞いていたくない。
調査に集中できなくなりそうだし。
「…これ、」
「どうしたの。スイッチないの? それ」
不意にラビの手がぴたりと止まる。
「スイッチがないなら、電池とか抜けばいいんじゃないんですか?」
覗き込もうとする私の隣で、同じようにチャオジーも人形を見ようとする。
そんな私達にちらりと目を向けたラビが、青い顔のまま人形を差し出した。
「ってか、そもそも電池がない」
差し出されて見えたのは、中の機械をぱっかり開けて、空っぽの電池入れを見せた人形の背中。
………え?
『キャハハハハ』
電池がないのに、その人形から出続ける"声"。
それは一定の速度で、繰り返し繰り返し。
『あたしエリー』
『なかよくしてね』
なんで。
電池がないなら、動かないはず。
「「「……」」」
三人で沈黙ができる。
これって、まさか──………
「…怪奇現象?」
ぽつりと呟いた声は、チャオジーのものだった。