My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
「この部屋、別に濡れてないですし。なんでかなーって思って」
「……」
チャオジーの言葉に、辺りを灯りで照らしてみる。
だけど確かに、水場なんてないし外で雨が降ってる訳でもない。
なんだろう。
「それなら、こっちも濡れてるさ」
「え?」
ラビの声に目を向ける。
少し離れた場所で床を差すラビに、灯りを近付ける。
「…本当だ」
其処には、ぽたぽたと上から落ちた滴のような跡があった。
つい天井を見上げてみるけど、そこから水が漏れてるような形跡はない。
「なんで…」
ん?
「…こっちにもある」
少し離れた場所に、同じ水滴。
ぽつり、ぽつりと、まるで何処かに続いていくように一定の距離で落ちている。
「部屋の外に続いてる…」
「うえ…嫌な予感しかしねぇんだけど…」
「行ってみましょう」
先頭を切って追ったのはチャオジー。
「げ、マジで?」
「雪さん、灯りお願いします」
「うんっ」
「待て待て! 置いてくなさっ」
慌てて後を追う私の後ろから、ラビも続く。
ぽたぽたと続く水滴の跡は、部屋を出て廊下を辿っていた。
「誰かいるのかな…」
「下水から出てきた鼠かなんかじゃねぇさ?」
「それなら足跡ができるはずでしょ」
私の横にぴったりとついて、しっかりとその手がファインダーのマントを握ってくる。
空いた片手は、しっかりと小型の鉄槌が入ったホルダーに伸びて──………うん。
怖いんだね、ラビ。
「雪、怖くねぇの?」
「うん…怖いのは怖いんだけど、」
目の前のチャオジーの背中を見る。
『ビビってんじゃねぇよ。さっさと来い』
迷わず先を進みゆく様は、あの高い背丈を思い出させた。
「チャオジー見てると、なんか神田を思い出すなって」
「えっ! 本当っスか!」
それに嬉しそうに反応したのは、チャオジー本人だった。