My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
「ラビ。火、お願い」
「ライター感覚でオレのイノセンス扱うのやめてくれませんか」
「それだけ便利ってことだよ。ほら、火」
「…褒められてる気がしない…」
渋々とラビは腰のホルダーから鉄槌を取り出すと、大きさはそのままにコツリと松明代わりのそれに当てて振った。
「"直火判"、」
ボウッとあっという間に先端に炎が灯る。
うん、大変便利なイノセンスだと思います。
「そんなイノセンスの使い方もあるんスね」
「や、チャオジー勘違いすんなさ。ライター代わりなんて普通しねーから」
感心するように呟くチャオジーに、ラビは首を横に振ってはっきり否定する。
まぁ確かに、イノセンスは"神の結晶"なんて呼ばれてる代物だしね。
…うん、ごめんなさい神様。
これは致し方ないんです。
「とにかくこれで引き続き探索はできるでしょ」
「うげ、まだ調査続けるんさ? もう夜だぜ」
「だってアレ」
指差した先には、
「これで見通しよくなりましたねっ次の部屋行きましょう!」
満面の笑みで隣の部屋に向かうチャオジー。
「…マジであいつすげーな…」
「見習おうか、ラビ」
「えぇえ…」
ぽんと高い位置にある肩に手を置けば、心底嫌そうな顔をする。
その気持ちはわかる。
わかるけど、約一名やる気だし。
初の任務なんだし、その気持ちを汲んであげよう。
「──チャオジー、何か気になるものあった?」
「ええと…これなんてどうでしょう?」
「うん、見せて」
やる気満々なチャオジーの為に、折角だしと私も任務に精を出すことにした。
恐らく心霊系は強い方みたいだし、平気な顔してるチャオジーの隣にいる方が、ラビといるより安心できるかも。
…あ、これって神田と一緒なのかな。
「これ…髪飾り?」
「はいっス」
チャオジーが見せてきたのは、極々普通の古い女性用の髪飾り。
「これのどこが──」
気になるのか。
それは受け取ってすぐにわかった。
「…濡れてる」
「そうなんです」
受け取った髪飾りは、ひやりと冷たく。
錆びた花模様の飾りから、ぽたりと滴が一滴落ちた。