My important place【D.Gray-man】
第24章 3/14Whiteday
「…お前、週末非番だろ」
「え? うん…そうだけど」
未だ寝たままの月城の顔を見下ろす。
「風邪が治ったら、俺に付き合え」
「付き合えって、何処に?」
「…飯」
「ご飯?」
そこは何も考えてなかったから、咄嗟に思い付いたことを口にした。
「それならよく食堂で一緒に食べてるけど…」
「違ぇよ、街での飯だ」
「街って…出掛けるの?」
バレンタインだなんだと浮足立つ街中で、買い物したり飯を食うこいつは割と楽しそうにしていた。
他人事なのに真剣に花瓶なんか選んで。
不味い飯でも楽しそうに話しながら頬張って。
そういう姿はどれも初めてで、そんな月城を見ているのは飽きない。
「前回行った店の飯、すげぇ不味かっただろ。別で食い直しだ」
「食い直しって…」
「嫌なのかよ」
お前が言ったんだろ。
俺が欲しいって。
結局こいつが好きなもんなんてわからず終いで、チョコのお返しとやらで何をあげたらいいかなんて見当もつかない。
ただわかっていることは、そこに思いを込めるもんにしろってことだ。
それなら俺自身で充分だろ。
「ううん、嫌じゃないっ」
慌てたように首を横に振ったかと思えば、へらりと月城は緩んだ笑みを浮かべた。
寝入る前と同じ。へらへらとした笑みに、すんなりと本音を口にした月城の言葉を思い出して、ついまた胸がうるさく騒ぐ。
「…なら空けとけよ」
「わ、」
その音から意識を逸らすように、小さな頭を乱暴に撫でる。
乱れた髪の隙間から、見上げた暗い目がぱしぱしと瞬いて。
「…うん」
砕けて笑う。
「…チッ」
「え? なんで舌打ち?」
「うるせぇな」
「なんで怒られんのっ?」
違ぇよ。
うるさいのは俺の心臓だ。