My important place【D.Gray-man】
第24章 3/14Whiteday
顔を覆った指の隙間から、寝入った月城の顔を見下ろす。
俺の掌に顔を擦り寄せて眠るその顔は、もう眉間に皺寄せた辛そうなものじゃなかった。
荒い息も多少落ち着いている。
だからなのか、それともこいつの本音を聞いたからなのか。額に触れた手は離せずに、胸の鼓動もうるさいまま。
「…そういうことは夢の外で言いに来い」
顔から手を離して身を屈めると、未だ熱で赤いそいつの顔に寄せて囁く。
どうせ届いちゃいないだろうが、言い逃げされんのは癪だった。
──不意に気付く
こいつがもし夢じゃなく現実の俺に向かってそんなことを口にしたら、その時は言い逃げなんかさせずに捕まえてやる。
抗がうような決意にも似た心に、一切の迷いはなかった。
──これは"俺"の心だ
これが"夢"だって言うなら文句はねぇよな。
自分にも月城にも言い聞かせるように心の中で決め付けて、呆気ない目の前の距離を縮めた。
しっかりと瞑られた瞼の上に、唇を軽く押し付ける。
熱の所為かどことなく熱い月城の肌に、俺にも熱が伝わる。
胸を刺した熱い感情が尚更、高まった気がした。
「…ん…」
薬が効いてるのか、今度は深い寝息のまま月城は目覚めなかった。
起きている時に同じことをしたらこいつはどんな反応をするのか、気になりはしたが今はそうやって俺の手に擦り寄る姿にどことなく満たされたから。
とりあえず、これだけで止めておいてやる。
「…お前が欲しいってんなら、くれてやるよ」
僅かに顔を離して、眠る月城に低く囁く。
俺を求めるならくれてやる。
その代わり。
「その時は俺もお前を貰うからな」
単なる食いもんや物なら無償でやってもいいが、俺を欲するなら大人しくやったりしねぇからな。
その時はお前自身も俺に寄越せ。
──この気持ちは"あの人"を想う記憶の中の俺じゃない
──"今"の俺自身が抱えた想いだと、はっきりわかったから