My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
…嬉しくはなった。
なったんだけど、も。
「…こんな所じゃ、見つからないはずだよね…」
ラビが空の上から見つけてくれた廃墟は、森の中の大きな岩場の後ろに存在していた。
そのすぐ隣は切り立った崖。
これじゃあ簡単に見つからない訳だ。
「てか、すげー如何にもな感じなんですけど…」
「うわー、まるで映画に出てきそうな建物っスね!」
私の右側で、顔を青くして呟くラビ。
私の左側で、キラキラした顔で弾んだ声を上げるチャオジー。
そう、見つかって嬉しかったんだけども。
目の前に静かに存在するその廃墟は、廃れてコンクリートも剥げかけた"如何にも"な雰囲気を醸し出していた。
鬱蒼と多い茂った背の高い草に囲まれ、あちこち瓦礫と化している。
中の鉄パイプが剥き出しになっていたり、窓ガラスが割れていたり。
そして何よりも恐怖を煽るのは、その大きさ。
大きい。
でかい。
ビッグ。
…えーっと…中国語で"大きい"ってなんて言うんだっけ…まぁいいや。
とにかく静かにぬっと建つその存在は、嫌という程静まり返っていて、落ちていく夕日に照らされる様はなんとも不気味だった。
「これだけ広い建物なら、今から全部屋見て回ってたら夜になっちゃうかも…」
「げ。まじかよ、オレ夜にこんな所いたくねぇんだけど…」
「でもやっと見つけたんですし! 頑張りましょう!」
軽い足取りで、真っ先に廃墟に踏み出したのはチャオジー。
「すげーな、あいつ…」
「男らしいね、ほんと…」
思わず二人で感心し合う。
本当、今回はチャオジーが一緒でよかった。
「男らしいって…男の魅力はそれだけじゃないさ」
「でも頼り甲斐あるよ」
「今回は、だろ」
むすっとした顔で口を尖らせるラビに、はいはいと相槌を返す。
その今回だから、とっても頼り甲斐あるんです。
「二人共、ほら早くっいきましょう!」
「あー、ハイハイ。待てって、チャオジー」
「うん、待って待って」
笑顔でほらほらと催促するチャオジーを追って、ラビと一緒に廃墟に踏み込む。
夕日で染まるその大きな廃墟は、窓ガラスの奥を暗く映し出していた。
静かに、ひっそりと。