My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
──パキ…
踏み付けた木屑が、砕けて小さな音を立てる。
「すげぇ荒れ放題さな」
「埃も凄いっス…」
「仕方ないよ、結構な築年数らしいから」
階段も廊下も各部屋も、何処も荒れた瓦礫や木屑で床は埋め尽くされていた。
設置されたその窓ガラスの位置の所為か、夕日は入り込まないようになっているから中は暗い。
荷物から懐中電灯を取り出して、明かりを付ける。
光を持ってるのは私だけだから、必然的に先頭を進むこととなった。
パキ、パキ…
木屑を砕きながら進む。
足場はガタガタで悪いから歩き難く、中々進まない。
これは本当に、夜になってしまうかも…。
「築年数ってどれくらいなんさ? 此処」
「さぁ…情報だと数十年前ってあやふやなんだけど、ご老人が子供の頃に見たことがあるって言ってたらしいから、結構な年数だと思う」
「どーにも、曖昧な情報ばかりさな~…」
「仕方ないよ、そういうものもあるって」
すぐ隣にいるラビは、辺りを伺うように見ながらその口から言葉が止まることはない。
同じく私も。
…だって黙ってしまうと、なんか怖いんです。
「あっ!」
急に大声を上げたのはチャオジー。
「見て下さい、二人共──…何してんスか」
「き、急に大声出すなさ…!」
「び、吃驚した…っ」
こっちを見てくるチャオジーに、青い顔で同時に応える。
そんな私達の手は、しっかりお互いの服を握っていた。
急に大声出したらビビるでしょ…!
「それよりあれ、見て下さい」
「あれ?」
「何?」
チャオジーが指差す先を、ラビと共に目で追う。
指差された先。其処は廊下の突き当たりで薄暗い中、目を凝らす。
するとその壁際にはぽつんと──
「…人形?」
古惚けたドレスを着込んだ、女の子の人形が置かれていた。