My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
ノアになったからって、絶対に教団の敵にならなきゃいけない訳じゃない。
私の軸がぶれなければ、きっと教団側で働いていられる。
普通のファインダーとして生きていけばいいんだし。
だってこの目の前にいるラビや、チャオジーや、他のエクソシスト皆を敵視する理由なんてどこにもない。
ノアのことを隠し続けるなんて、皆を騙すようで後ろめたいけど…悪気があってする訳じゃないし。
…それで神田の隣に、変わらずにいられるなら。
「…その列車で会ったノアは、本当に人間と変わらなかったの?」
「ってか人間そのものだったさ。あいつの性格が人間臭いってのも一つあるけど…ノアって言っても元々は人間だからなー」
「…そっか」
うん…そうだよね。
何気ないラビの言葉に、心が少しだけほっとした。
ノアだなんだ言ったって、元は皆と同じ人間なんだから──
「でも敵っスよ」
不意に響いた声は、少し離れた所から。
「ノアはAKUMAと同じ、倒すべき存在っス」
其処には低い声で呟くチャオジーがいた。
「アニタ様や皆を殺したAKUMAの仲間なんスから…」
その目には強い意志のようなものが見える。
家族同然だったアニタさん達を殺されたんだから、それは仕方のないことなのかもしれない。
…だけど。
「そんなの人間じゃない」
冷たく否定するその言葉に、思わず息を呑んだ。
まるで私自身に言われているようだったから。
「チャオジー…」
「あ、すみません! 急に話に割り込んで…ッ」
ラビの声に、はっとしたようにチャオジーの顔が焦る。
そこにはもういつも通りの、人の良さそうな顔した彼がいた。
「まぁ俺なんかじゃ、まだまだノアを倒すまでには至らないんスけど」
ぽりぽりと頬を掻きながら苦笑するチャオジーに、すぐに言葉をかけることはできなかった。
──そうだ。
教団には、AKUMAやノアを倒すという信念を持って働いている人達が大勢いる。
聖戦に勝つ。
その目的が大前提として成り立ってる組織だから、それは当たり前のこと。