My important place【D.Gray-man】
第24章 3/14Whiteday
「嘘…もう帰って、きたの…?」
寝起き故か、風邪故か。ぎこちなく問いかける月城は、まじまじと俺を見上げてくる。
「ああ…」
「ぁ…これ、夢か…」
「は?」
頷こうとすれば、重なるように一人で勝手に納得した月城が微かに笑う。
その口から漏れた言葉に思わず呆れた。
夢ってなんだ、そこまで意識朦朧としてんのかよ。
「神田が…看病なんて…あり得ないし…」
…おい待てテメェ。
一人納得した顔のままぼそぼそと呟く月城は、どうやら額に触れている俺の行為が看病だと思ったようだ。
「神田の手…気持ちいい、ね」
ぜぃぜぃとまだ少し荒い息をついているものの、赤い顔を綻ばせてへにゃりと月城がマヌケに笑う。
こんだけ熱い体温してりゃ俺の手だって冷たく感じるだろ。
どうせなら濡らしたタオルか氷のうで冷やした方がいいだろうが、そんなことを言われるとこの手の逃げ道を失ってしまう。
というか純粋に額から離せなくなってしまった。
「…飯は食ったのか」
「…まぁ…少し」
「薬は」
「飲んだ、よ」
どうやら必要なものは摂取したようだ。
それなら後は大人しく寝ていれば、そのうちにでも治るか。
内心安堵しつつ、月城の額に触れたままベッドの枕横に腰掛ける。
未だ荒い息をつく様は気になるが、それを緩和させられる術を俺は知らない。
やれることといえば精々傍にいることだけだ。
「喉の乾きはどうだ。水が欲しいなら持ってきてやる」
問いかければ、またもまじまじと朧気な目が見上げてくる。
すると徐に月城は熱い息を吐いた。
「…やっぱり夢だ」
「あ? まだ言ってんのか」
「だって…神田が、優しい」
「…どういう意味だコラ」
確かに日頃優しくしてる気はないが、そこまで荒く扱ってねぇだろ。
…………多分。
「…へへ」
睨んでやっても月城はへらへらと力なく笑うばかり。
夢だと思えば俺のことも平気なのか、すごんでも効果はなさそうだった。
それならと、ふと思いつく。
俺のことを夢だと思っている今なら聞けるかもしれない。