My important place【D.Gray-man】
第24章 3/14Whiteday
今朝見送った扉の前で一応、ノックをしてみるも返事はない。
「…入るぞ」
どうせ寝ているんだろう、一言声をかけてドアノブを回す。
目の前に広がったのはどこにでもある、あり触れた間取りの一人部屋。
そういや月城の自室に入ったのは初めてか。
「月城」
部屋の隅に置かれたベッドには、こんもりと小さな布団の膨らみがある。
顔や手足を全部隠してはいるが、中に人がいることは一目でわかった。
ただ声をかけても返答はない。
やっぱまだ寝てんのか。
寝てる奴をわざわざ起こす気はないが、隠れるように寝ているそいつの顔くらいは見て帰ろうかと思い、ベッドの傍に寄る。
一応、起こさないようにと気配を殺して、静かに布団を捲った。
案の定、中にいたのは月城だった。
案の定、しっかり瞑った瞼に意識は睡眠の中へと落ちていた。
ただ一つ、その姿には眉を顰める。
「っは…」
ぜぃぜぃと小さく荒い息を吐きながら、縮こまるように丸まって寝ている。
ガキみたく体を縮めて眠る姿は、ミュンヘンやゾンビ事件で見たあいつの寝姿を思い出させた。
ただ今はそれ以上に、発熱した赤い顔に苦しそうな表情で短く呼吸する姿に目が止まった。
今朝はマスクで半分しか見られなかったが、それでも明らかにあの時より症状が酷い。
医務室には行ったのか。
部屋の中を見渡せば、机に薬と水の入ったコップが見える。
空の薬の袋を見るところ、どうやらきちんと薬は飲んだようだ。
が、今日一日で治る風邪じゃなかったってことか。
「…は…ぁっ」
荒い息をつく月城の額に手を伸ばす。
前髪の下に滑り込ませて額を包むように掌を当てれば、絆創膏越しでも熱い体温が伝わった。
…結構高ぇな。
するとその行為で気付いたのか。ふるりと震えた月城の瞼が、薄らと開いた。
「……ぁれ……神、田…?」
焦点が揺れていた目が俺を捉える。
ぼんやりとした顔が見上げて、不思議そうに呟いた。
声は未だ掠れた鼻声状態。