My important place【D.Gray-man】
第24章 3/14Whiteday
「そっか…雪、大丈夫かな」
転がる小枝をヒールのある靴が避けて通る。
その後を構わず進めば、静かな森林にぱきりと小さな音が灯る。
任務先で月城からの言付けをリナに伝えれば、先を歩いていた顔が心配そうに振り返った。
「あいつもファインダーの端くれだ。風邪くらい自分で治せんだろ」
「そうだけど…でも弱ってる女の子には優しくしなきゃ駄目よ? 神田」
…なんで俺に言うんだよ。
「別に荒く扱ってねぇよ」
確かに普段から鍛えてるあいつは一般人の女よりは頑丈だろうから、あまり気にせず頭やら背中やら叩いていた。
が、それはあいつが阿呆なことした時だけだ。
別に好きで叩いてねぇよ。
「そう? でも確かに最近は雪と仲良いもんね。よく一緒にいるし」
笑いかけてくるリナに、返す言葉がなく黙り込む。
どこをどう見て仲良いだなんて思ってんのか知らねぇが…変に馴れ合おうと思ったから傍にいる訳じゃない。
俺があいつの傍にいたいから、いる。
それだけだ。
「ね、神田。14日に雪と街にお出掛けしたってラビから聞いたんだけど。何か貰ったりしなかった?」
「は?」
顔だけじゃなく体も向けてきたかと思えば、うずうずとした笑顔でリナが俺を下から覗いてくる。
何か、なんて言われて心当たりがあるもんは一つしかない。
そういやリナと一緒の任務先で、あのチョコを買ったって言ってたな…あいつ。
「…別に」
ただそれをわざわざそれを教える気にはなれなくて、目線を逸らして一言。
「あっ貰えたのね」
なのに当然のように見抜いたリナは、嬉しそうに満面の笑みを浮かべ返した。
…昔っから、こいつには時々隠し事ができない気がする。
「雪も喜んだだろうなぁ」
「そんな話より、今は任務の」
「それで神田は何をあげたの?」
は?
「日本では女性からのバレンタインギフトも多いらしいけど、イギリス(こっち)では男性からが主流でしょ? ちゃんとお返しあげた?」
…知らねぇよ、んなこと。
初めて聞いた。
「え…もしかしてあげてないの?」
黙り込む俺の態度に真意を見破ったリナの目が、驚きで丸くなる。
だからいちいち見抜いてくんな。
話しづれぇ。