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My important place【D.Gray-man】

第24章 3/14Whiteday



 2月14日。
 急な雨に降られたあの日、初めて月城と二人だけで任務以外のことで外出をした。
 目的に黒の教団に関することは一切ない。
 ただ謎に送られた大量の花を活ける為の花瓶を買うため。
 それも俺の意思じゃなく、月城が率先して行ったことだ。

 それでも任務以外のあいつの顔を見るのは飽きなくて、振り返れば瞬く間だった気もする。
 一瞬でも脳裏に焼き付いたまま離れない、雨に濡れた髪を頬に垂らす顔。
 腕の中にあっさりと納まった柔い体。
 交わした言葉の温度。

 そんな記憶もまだ新しい中、日常に戻ったよくある任務当日。


「…お前な」

「ずびばぜん…」


 月城は思いっきり風邪をひいた。


「どっから出てんだよ、その声」

「普通に喉から…ゴホッ」


 顔を見る前からわかる、明らかな掠れた鼻声に思わず顔を顰める。
 顔半分も覆うでかいマスクで口を覆った格好で、月城は朝早くに俺の部屋に訪れると申し訳なさそうに頭を下げた。


「コムイ室長には伝えてるから…今日の任務は、別のファインダーが就くと思う。迷惑かけて、ごめん」


 口調もいつもより覇気がなく、マスクで面積の狭い顔色を見ればいつもより肌が赤い。
 明らかな風邪症状だ。


「わざわざそんなこと言いに来たのかよ。伝言なんざ誰かに任せりゃいいだろ。さっさと戻って寝ろ」

「うん…」


 雨に降られた日は平気そうにしてたが、時間経過で悪化したのか。俺の言葉にも口数少なく、大人しく月城は背を向けた。
 ふらふらと部屋を出ていく足取りは覚束無くて不安になる。
 …途中でぶっ倒れねぇだろうな、あいつ。


「ったく」


 溜息をついて背中を追う。
 一人で自室に戻らせるくらいなら、見届けた方がいい。


「月城」


 隣に並べば、不思議そうな顔で見上げてくる。
 いつもと違うのは、朧気に見てくる霞んだ目か。


「途中で倒れでもしたら後味悪いんだよ。ついて来い」

「ぇ…うん…」


 歩幅は月城に合わせるように、ゆっくりと歩いて促す。
 部屋まで送ることを理解するのに時間がかかったようで、ぼそぼそとマスクの下から漏らしながら一歩遅れて頷いた。

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