第25章 Noah's memory

「ゴズも気を付けてね。AKUMAが出ないとは限らないから」

「大丈夫です！　しっかり神田さんのサポートしてきますからっ」


　憧れの神田と一緒の任務で余程嬉しいんだろう。心配して声を掛ければ、満面の笑みで返された。


「じゃあ私こっちだから」


　自室に続く曲がり角で、足を止めて皆に手を挙げる。


「おい、」


　呼ばれて振り返る。
　重なったのは神田の黒い眼。


「何？」

「…いや。なんでもない」


　問い掛ければ、じっとこちらを見てくる。
　それから、ふいと自然な動作で視線を逸らされた。


「うん？　じゃあ…任務、いってらっしゃい」

「…ああ」


　軽く手を振れば、それだけ手短に返される。

　"いってらっしゃい"だなんて言葉を神田に掛けたこと、なかったような気がする。
　それだけ同じ任務が多かったから。

　初めて交わした言葉でも、やっぱりいつも通り神田は神田のままだった。


　…そんな姿とも暫くお別れかな。