My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
好きだとか、嫌いだとか。そういう簡単な想いじゃない。
だからこそ安易にぶつけられないけど、腕の中にこうして閉じ込めておきたい。
"あの人"に向けた想いと似ているが、違うこれは月城だけに向ける想いだ。
いつかこの想いを口にできる日はくるんだろうか。
目の前のこいつに。
「茹でダコみたいになってんぞ」
「誰の所為…」
腕を開いて解放すれば、顔に手を当てて月城が力なく離れる。
振り返った顔は真っ赤で、つい笑みが漏れた。
「…なんで笑うの」
「反応が忙しない奴だなと」
「馬鹿にしてる…」
「してねぇよ」
赤い顔を半ば隠しながら見てくる姿は、一年前じゃ想像もつかなかった。
だからあんまり、そういう反応するんじゃねぇよ。
「可愛げはあるんじゃねぇの」
また欲が出るだろ。
「…っ」
月城の顔が更に赤く染まる。
そんなこいつの姿に、どうしようもなく口元の笑みは消せそうになかった。
ここまで色々と表情変えて、ここまで俺の感情を変えられる奴は、多分。こいつだけだろうな。
「…で?」
「うん…」
その後。
「感想でもあるなら言ってみろ」
「…部屋、明るくなったね」
無事雨も上がり、教団に帰り着いて一番に風呂場に月城を連れて行った。
腕組みしたまま自室を見渡し言えば、風呂上がりのタオルを肩にかけたまま、隣に立つ月城の顔が引き攣る。
なんだその苦し紛れな褒め言葉は。
こいつが選んだ花瓶にまとめて飾られた花束は、想像以上にでかく幅を取る羽目になった。
目に痛いくらいに主張してくるもんだから、明らかに部屋のバランスがおかしい。
元々部屋を飾り立てる趣味なんてないが、これは明らかに悪趣味だろ。
まるで祝い花じゃねぇか、これから此処で店でも開くのかよ。
「でも、ずっとじゃないから。花が枯れるまで、お世話くらいできるでしょ? 一日一回、水を換えるだけだし」
「お前の担当な、それ」
「えっ。」
お前の言う通り、飾ってやったんだから。
責任持ってお前が世話しろよ。
それから暫く、俺の部屋に足を運ぶのが月城の日課となった。