• テキストサイズ

My important place【D.Gray-man】

第23章 2/14Valentine



「にしても雨止まないね…」

「一時的なもんだろ。多分」

「多分って」


 橋の外を見据えたまま月城が笑う。


「こうして雨の中にずっといるとさ、違う世界にいるような気分になるんだよね」

「なんだそれ」

「子供の想像遊びみたいなものだよ。いつもの景色も違って見えるから、まるで別の世界みたいで」


 そういうもんか?


「昔は雨が嫌いだったから、この世界もあんまり好きじゃなかったけど…今はいいかなって思える」


 微かに笑う気配がして、俺の胸に凭れたまま月城は軽く肩を竦めた。


「多分、神田がいるから」


 零れ落ちた音は、下手すれば雨音に掻き消される程の声。


「神田の傍だと、寒くない」


 それはこの直接分け合っている体温からか、それとも別の何かか。理由はわからなかったが、問う気もなかった。

 それよりも、そう優しい言葉で紡ぐ月城の存在から目が離せなくなって。
 胸に当たる小さな背中。
 そこから伝わる確かな体温。

 じり、と胸が焦げる。

 視線を軽く落とせば、すぐそこに濡れた髪が張り付く首筋が見えた。
 細く白い首筋に、伝う雫が目に映る。

 気付けば自然と、そこに顔を寄せていた。


「っ…?」


 軽く顔を下げただけで、呆気無く小さな首元に俺の顔が埋まる。
 雨の匂いに混じる、月城の肌の匂い。
 ぴくりと小さな肩が揺れて、耳に届いたのは吐息のような声。

 じり、と胸が焦げ付く。


「なに…息、くすぐった…っ」


 身動ぎながら体を離そうとする。
 そんな僅かな抵抗でさえも、どこか甘く感じる。
 そこから沸き上がるのは確かな"欲"。
 …まずいな。

/ 2655ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp