My important place【D.Gray-man】
第25章 Noah's memory
ノアのこと、結局神田には伝えられなかった。
伝えたいと思ったのに、臆病な心が邪魔をした。
神田の言葉にきっと偽りはない。
あの時の神田は、本当に私を心配してくれていた。
『一人でなんでも抱えようとすんな。…キツい時は頼れ』
…もしかしたら神田だけに伝えることならできるかもしれない。
教団には言えなくても、神田だけに吐き出して私を受け入れてくれたら。
でもそれは一番しちゃ駄目だ。
神田が受け入れてくれたとしても。
それでもし教団に私のことがバレたら、それを知っていた神田も処罰の対象になってしまう。
最悪、教団に神田も敵だと確定されてしまったら。
…それだけは駄目。
教団に造られた神田の生きる場所は、きっと此処だけだから。
その唯一の場所を私が奪ったら駄目だ。
「……」
解決策なんて何も見えないけれど。
こうして変わらず、皆と一緒にご飯を食べていたいから。
………なんとかしなきゃ。
「……あれ? そういえばリンクさんは?」
「ああはい、リンクなら──」
「ウォーカーッ!! 急にいなくなるのは止めなさい!」
ふといつもアレンの隣にいたその存在がいないことに気付いて、問いかける。
するとアレンの言葉を遮って、鋭い罵声が飛んできた。
見れば額にくっきり青筋立てて、乱れた息で向かってくるリンクさんが。
うわ…多分ずっと捜してたんだろうな、アレンのこと。
「急になんて、ちゃんと言いましたよ。ティムを捜してくるって」
「あれは単なる言い逃げです。捜すなら私も一緒に──…何してるんですか」
呆れ半分、怒り半分。
そんな顔で咎めるリンクさんの目が、私達を見て止まる。
その驚き具合はラビと一緒。
「リンクさんも一緒に夕飯どうですか」
「…夕飯?」
そう誘えばリンクさんの目が、アレンから私、私から神田、そしてまたアレンに移る。
「貴方あれ程おやつを食べたのに、まだ足りないんですか」
「おやつはおやつ、夕飯は夕飯。別腹です」
おやつ?
……。
そういえば午後にアレンを食堂で見かけたって、ラビが言ってたっけ。