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My important place【D.Gray-man】

第23章 2/14Valentine



「でも…っ」

「お前が風邪をひいたら俺が困るんだよ。次の任務で支障きたすだろ」

「…それは…」


 次の任務はもう決まってる。
 仕事真面目な月城のことだ、言えば案の定、口を渋らせた。
 それでも体は躊躇するようにその場から動かない。
 …お前な。


「来ないならこっちから行」

「行きます!」


 ドスの効いた声色を出した途端、月城の体は立ち上がった。
 もう条件反射だな、お前のそれ。


「ぅぅ…こんなところ女神様達に見つかったらどうなるか…」

「なに意味不明なこと言ってんだ」

「…なんでもないです」


 顔を俯かせながら、渋々と寄る月城の手首を掴む。
 そのまま引いて足の間に座らせれば、小さな体は更に縮こまった。
 前を向いて座っている月城から見えるのは、ぶかぶかな上着を着た背中だけだ。


「離れんなよ。暖が取れねぇだろ」

「わ…っ」


 肩を掴んで引き寄せる。
 背中が俺の胸に当たるように密着させたまま、腕を前に回して閉じ込めた。
 すっぽりと簡単に腕の中に入るこいつの体は随分と小さい。

 固まったように体に力を入れて座り込んで、髪の隙間から覗く耳は僅かに赤い。
 …照れてんのか、こいつ。

 そんな月城を見ていると、胸の奥がじりじりする。
 最近知った、こいつへの焦げ付く想いが沸き上がる。


「寒かったら言えよ」

「…大丈夫です」


 ぽそぽそと返ってくる声は、酷く小さい。


「我慢してたらはっ倒すからな」


 すぐ我慢する癖があるからな。
 念を押して言えば返事はなかったものの、ぎこちなく目の前の体が僅かに身動いだ。


「…神田ってさ、」

「なんだ」

「こういうこと…平気で、できる人?」


 は?


「こう…体、密着させたり、とか…」


 ぽそぽそと更にか細い声で、辿々しく問いかけてくる。
 髪の隙間から覗く月城の耳は赤いままだ。


「だとしたら…あの、あんまりしない方がいいかも…」


 …なんでだよ。


「誤解する人もいると思うから」


 確かに月城の言うことは一理ある。
 だからこそ無駄に優しさなんか振り撒こうとは思わない。

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