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My important place【D.Gray-man】

第24章 3/14Whiteday(番外編)



「え…もしかしてあげてないの?」


 黙り込む俺の態度に真意を見破ったリナの目が、驚きで丸くなる。


「神田………最低。」

「ッんだよ! 知るかそんな行事!」


 元々バレンタインなんてもんに興味はなかったんだ。
 そんな国別のしきたりなんて知らねーよ!


「駄目よ、知らなかったからで済ませちゃ。雪が今まで誰かにバレンタインギフトを贈ったことなんて、ないんだから。ちゃんとお返しなさい!」


 「めっ」と言いながら指を立ててくるその姿に、つい押し黙る。

 こいつ、俺より年下なのに時々姉貴面みたいな顔してくるからな。
 おまけに拳や足技も遠慮なく出してくるから、下手に逆らえない時がある。


「お返しって…何やるんだよ」

「それは神田が自分で考えなきゃ。なんでもいいのよ、雪が喜ぶものなら」

「……」


 何かに月城が執着しているところは、見たことがない。
 そんな奴の欲しいもんなんて見当もつかない。
 精々知ってるのは、モヤシみたいに食好きなことくらい──……蓮華の茎でもやるか。


「…却下」


 思い立った案は、思い立ったと同時に破棄。
 流石にそんなもんやれやしねぇ。


「思いを込めてれば、なんでもいいのよ。それが大事なんだから」


 笑って言うリナのその言葉は、月城が口にした言葉と同じだった。





『どんな形であれ、思いが詰まったものだから』





 …確かにチョコなんて甘ったるい菓子好きじゃないが、あいつが思いを込めたもんだと思えば素直に嬉しいと感じられた。

 ……成程な。


「よしっじゃあ早く任務終えて帰らなきゃね。神田、急ごう!」

「っおい!」


 軽い足取りで深い森の中を進むリナを、咄嗟に追う。
 どうせコムイのことだから、すぐ済む任務を選んでんだろ。


「リナリーさん! 神田さん! こちらです!」


 先頭を案内していたファインダーが、一つの洞穴の前で手を挙げる。
 本来ならそこには月城の姿があったはず。
 あいつがいないだけで、どうにも簡単な任務なのに時間が過ぎるのはいつもより遅く感じた。

 …さっさと片付けてさっさと帰るか。
 あいつがいなけりゃ、ただの退屈な時間凌ぎだ。











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