My important place【D.Gray-man】
第24章 3/14Whiteday(番外編)
あの急な雨に降られた14日が過ぎ、月城との任務当日。
「……お前な」
「…ずびばぜん…」
こいつは思いっきり風邪をひいた。
「どっから出てんだよ、その声」
「普通に喉から…ゴホッ」
思わず顔を顰めたのは、その明らかな掠れた鼻声に。
でかいマスクで口を覆った格好で、月城は朝早くに俺の部屋に訪れると申し訳なさそうに頭を下げた。
「コムイ室長には伝えてるから…今日の任務は、別のファインダーが就くと思う。迷惑かけて、ごめん」
その口調はいつもより覇気がなく、その顔色もいつもより赤い。
明らかな風邪症状だな。
「わざわざそんなこと言いに来たのかよ。伝言なんざ誰かに任せりゃいいだろ。さっさと戻って寝ろ」
「うん…」
14日は平気そうにしてたが、日を跨いで悪化したのか。
俺の言葉にも口数少なく、大人しく月城は背を向けた。
ふらふらと部屋を出ていく足取りは、どこか覚束無くて不安になる。
…途中でぶっ倒れねぇだろうな、あいつ。
「ったく」
溜息をついて、背中を追う。
一人で自室に戻らせるくらいなら、見届けた方がいい。
「月城、」
「?」
隣に並べば、不思議そうな顔して見上げてくる。
いつもと違うのは、朧気に見てくる霞んだ目。
「途中で倒れでもしたら、後味悪いんだよ。ついて来い」
「ぇ…あ、うん」
歩幅は月城に合わせるように、ゆっくりと歩いて促す。
部屋まで送ることを理解すんのに時間がかかったようで、ぼそぼそと声を漏らしながら頷いた。
「…ありがとう」
朧気な目元が、柔らかく緩む。
マスクで顔を半分も隠してよく見えない表情なのに、そんな月城に目を止める自分が其処にいた。
…こんな顔、他の奴には見せらんねぇな。