My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
体を抱いてうずくまる様は小さなガキのようで、その場に一人孤立して存在しているようだった。
どこか儚く見えて、傍に繋いでいないと消えてしまいそうな気がした。
今も同じだ。
ガキじゃねぇんだ、目を離した隙に勝手にどっかに行ってしまうことなんてこいつはしない。
それでも、この縋るように袖を掴む手を離したくないと思った。
「…雨が小降りになるまでだからな」
溜息混じりに、再びその場に腰を落とす。
「そしたら教団に戻る」
「うん、わかった」
隣に座り込めば、ほっとした様子で月城の手が袖から離れた。
その姿は、俺が傍にいることに安心しているかのようにも見える。
…こうやってこいつの素直な内面を知ると、幼いガキのように見えることが時々あった。
以前にこいつ自身も言っていた、自分の中にある"弱い自分"。それがどこか幼く映るんだろう。
「くしゅんっ」
もう一度、静寂に響く小さなくしゃみ。
傍にいるにしても、これは見過ごせない。
このままだと本当に体調を悪化させるかもしれない。
「…ったく」
脱いでいた上着を丸め込むと、力任せに搾り上げる。
服にしみ込んでいた残り僅かな雨水が、地面に全て落ちるのを確認する。
「これ着ろ」
「え?」
「その服は濡れ過ぎだ。こっちに着替えろ」
月城が着ている服は、今絞った俺の上着より雨水を含んでる。
濡れてはいるが、それよりはこの上着の方がマシだろ。
「着替えろって、ここ外だよ」
「んなもん上から隠せばいいだろ」
「わっ」
上着で月城の体を包んで、前を止める。
急な雨でこんな橋の下じゃ人影もない。
見てる奴なんていねぇよ。
「下で脱げよ、そっちは」
「本当に着替えるの…っ?」
「ずぶ濡れ状態よりはマシだろ。教団までその上着を着てろ」
んなずぶ濡れの服着てたら風邪ひくだろうが。
言えば渋るものの、本当に寒いんだろう。月城は渋々と背中を向けた。
「あの…じゃあ、あっち向いててもらえる?」
「…ああ」
座り込んだまま月城に背を向ける。
そういや前にも、こんなことがあったな。
あれは確かゾンビ事件で一晩、こいつの病室で過ごした時だ。