My important place【D.Gray-man】
第23章 2/14Valentine
でも…あれ。神田が周りの人達に関心を少しでも持ってくれるのは、嬉しいことなのに。
なんだか少しだけ、胸の奥がきゅっとなるような、なんだか、切なくなるような……なんだろう?
「あ、ねぇ神田」
その切なさを無視するように、視界に入った看板に目を止める。
神田と街に出掛ける。
そんなこと任務以外では一緒にしたことなかったから、なんとなくまだ教団には戻りたくなかった。
太陽はもう高い位置にある。
丁度お腹も空いてきたし。
「どうせだから、お昼食べて行こうよ」
看板を掲げた飲食店を指差せば、神田は一瞬渋る素振りを見せたけど足を止めてくれた。
「わぁ、凄いバレンタインメニューばっかり」
店内に入ってメニュー表を覗けば、見事にバレンタイン色に染まってる料理の数々。
思わず笑ってしまう。
「どんだけ浮足立ってんだよ…そんなに大事なもんなのか」
呆れた顔でメニュー表から周りに視線を移す神田に習って、同じく周りを見渡す。
お昼時だから人が多いのは頷けるけど。その大半が男女ペア。
夫婦や恋人同士らしく、仲睦まじく食事していた。
「夫婦や恋人には大事なイベントだよ」
こうして二人でペア席に座ってる私達も、そんなふうに見えるのかな………いや、ないない。
何気なく浮かんだ自分の思考に予想外にも照れがきて、メニュー表で口元を隠しながら神田を盗み見る。
興味なさそうに周りを見渡す顔は、いつもの神田と変わらない。
だけどいつもの暗い内装の教団じゃなく、明るく賑やかな店内で向かいに座ってるのがなんだか新鮮で、その横顔もいつもと違って見えた。
「なんだよ」
周りを見渡してた黒い目が不意にこちらに向く。
流石、視線は感じていたらしい。
そんな神田と目が合ってドキリとした。
「う、ううん。神田はメニュー決まった?」
「蕎麦はねぇのか、此処」
「流石にないかな…うん」
でもやっぱり神田は神田でした。